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No.003 「総合診療科」と「総合診療」

2010/11/01

「総合診療科」と「総合診療」は似て非なる?

「総合診療科」は、何だか、なんでも診断できる診断学万能プロ集団のようで、
聞こえも良いし、テレビドラマでもやっているし、一種のブームになっていることは理解できる。

実際、総合診療科の大きな役割は診断を下すことで、診断なくして治療はできない。
総合診療によって迅速に診断が確定すれば、次は治療に移ることが可能となる。

しかし、今あえて「総合診療科」と銘打たなくても、本来すべての臨床医は、
自分の専門領域にかかわらず、頻度の高い疾患に関しては、
その診断と治療を、自ら、もしくはコンサルテーションによって遂行しているはずではないのか?

すべての医師は総合診療を実践している はず である。

「総合内科」がない病院では総合診療が行なわれていないの?

初診で訪れる方を診療する時がまさに総合診療で、どの病院、医院でも初診の患者がいるわけであり、
したがって、あらゆる病院や医院で実質的には総合診療がおこなわれている。

もちろん、そのレベルには開きはあるが・・・当然ながら、初診診療だけが総合診療ではなく、
他疾患で診療中の患者が、自分の専門外の疾患を合併することだっていくらでもある。

内科総合診療は難しいの?

ドラマなどではドラマであるがゆえに、きわめて稀な疾患や複雑な病態が題材になっていることが多い。

しかし、実際の現場では風邪症状、めまい、頭痛、腹痛、胸痛、発熱、しびれなどの訴えが多く、
診断もありふれたものであることが大部分だ。

しかし、「稀な病気が典型的な病像を示すより、ありふれた病気が、非典型的な病像を示すことのほうが多い」と言われる。
たとえば、風邪と思われる症状で、実は風邪でなかったなどが典型。総合診療はやっぱり難しい。

総合診療をおこなうためのスキルは?

総合診療を有効に行なうためには次の2点が重要と思う。

  1. 診察の基本(問診、身体所見をくまなく観察、的確な検査の実施など)を忠実に守る。
  2. 疾患に対して、幅広い知識と経験、洞察力がある。

1. は誰でも実行可能だが、 2. はとても奥が深い。つきつめれば、総合診療医は全ての専門分野に通じ、
あらゆる疾患についてその詳細を知り、かつ、あらゆる疾患の診療経験がなければならないことになる。

しかし、そんなことは到底不可能だ。一人の医師が、高々40年足らずの医師人生で全ての分野に精通したり、
全ての疾患を体験することなどできようか。ではどうするか。

ひとつの方法として、学会などの症例報告、雑誌の片隅の記事、他医の話など、
何でも「自分の経験」として取り込んでしまう。少なくても自分はそうしてきた。
そのおかげで、まったく経験したことのない疾患の診断も可能であったことが幾度かある。

「総合診療内科」を有名有実にするには

本当の意味での「総合内科」を実現させるのであれば、
疾患10領域(消化器、循環器、呼吸器、神経、血液、膠原病・自己免疫疾患、感染症、代謝・糖尿病、内分泌、精神疾患)
のいずれかを極めた医師達をすべて集め、あらゆる領域をカバーできるチームを作ることが理想ではないのか?

実際、なかなか診断がつかないケースも多い。その診断のつかないケースの診断をつけるのが「総合診療科」であるべきで、
治療は各専門領域の医師にまかせるのが良いと思う。

ちょうど北米型ERのように。

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