ホーム > Dr.ブログ > No.091 独裁者

  • 救急の場合
  • 診療時間
  • 面会時間
  • 人間ドック
  • フロアマップ
  • 川口正展のなるほどザ・メディスン
  • Dr.ブログ

No.091 独裁者

2011/11/30

「独裁者」 を自称して

大阪のダブル選挙を仕掛けた橋下徹氏が当選を果たした
何でも 「大阪都構想」 を実現するのだという
「大阪維新の会」 を作り、自らが代表をつとめる橋下氏は、二重行政の無駄を省くという名目で、この構想をどうやら本気で実現したいらしい
ともあれ、 「独裁者」 のキーワードが 「大阪・秋の陣」 での勝利につながったことは否めない

しかし、 「市民の総意」 と繰り返し発言する割には

平松候補と圧倒的大差をつけて勝利したわけでもなく、平松氏だって前回の市長選より得票数を伸ばし、善戦した

裏を返せば

独裁者たらんとする橋下氏に断固反対の大阪市民も多いわけで、大阪都構想は決して市民の総意ではないということだ
橋下氏はそこを勘違いしてはならないと思う
また、棄権した 40%の市民の中でも橋下氏の構想に反対する人も少なからずいると考えられるし、橋下氏の 「大阪都構想」 の本当の意味と、結果を、よくわからないまま、インパクトやカリスマ性だけで選んでしまった有権者も多いと思われる
まずは、橋下氏の手腕、お手並み拝見といったところか

「独裁者」 と聞くと、僕はヒトラーを連想する

その他には、カダフィー、キム・ウィルソン、カストロ
彼らは、それまでの体制を覆して、国を変えた、一時期は 「偉大な」 指導者であった
しかし、独裁者だから国を変えられたのではなく、国を変えたから独裁者たり得たと考えるのが正しいだろう
つまり、 「自分が独裁者になる」 と公言して独裁者になった人などいない

日本には、嘗て幾人もの独裁者達が存在した

古くは藤原道長、平清盛
また、近世においては信長、秀吉、家康も、 「独裁者」 と言える
これらの独裁者が、自らの考えで日本を動かし、旧体制を変えてきた

道長は、
天皇による政治を、姻戚関係などを利用して自分の一族の欲しいままにあやつった
清盛は、
それまで長く続いた貴族政治を武家政治に変えた
信長は、
群雄割拠の戦国の世にあり、室町幕府を終らせ、信長中心の世に作り変えようとした
家康は、
ゆるぎない幕藩体制による、260年間の平和な日本の礎を作った

江戸幕府は

発足当初は将軍に権力が集中した軍事独裁政権であったが、綱吉の頃からは、幕僚達が政策の中心を担い、次第に文民政治に変わって行く
すなわち、民を重んじ、今でいう社会保障政策のようなものまで行い、民の教育や新田開発、天災の復旧事業等も推進し、日本を近代国家へと変えていった

「独裁者」 という言葉はある意味、魅力的である

能力のある指導者であれば、独裁者として、体制を大きく変えることができるからだ
しかし、清盛、信長、秀吉、サダム・フセイン、カダフィー、マルコスの例を見ると、個人のカリスマ性に基づいた権力集中構造の脆さも同時に浮かび上がる
また、過去の独裁者達は、権力を手にすると、往々にして私利私欲を求め、一族の繁栄だけを願い、国家を私物化してきた
このような独裁者は、結局、破滅の道を辿った

さて、中東に、人口140万人のカタールという国がある

首都は 「ドーハの悲劇」 で有名なドーハである
カタールは事実上、サーニー家により独裁支配されている

カタールは産油国であり

豊富な資源により得られる外貨が国に富をもたらす
独裁政権の形を取るものの、現首長ハマドが先を見越し、埋蔵資源だけに頼ることのない経済体制を作った
すなわち、英国の名門ハロッズを買収したり、観光立国としての地位も確立するなどの外貨獲得政策を急速に推し進める
これは、独裁体制であるがゆえ、反対派との無駄な議論に時間を費やすこともなく、政策がスピーディーに、タイミング良く進められたためできたからこそ成しえたことだ
富める国、カタールには所得税がないし、教育・医療費も全額国家負担だ
だから、たとえ独裁国家であろうとも、国民の政府に対する不満はないという

日本は

カタールのように資源国ではないばかりか、毎年50兆円の税収不足の経済大国である
世界の各国と絡み合う政治・経済は、はるかに複雑で、これをたった一人のカリスマ 「独裁者」 が手品のように変えることなどできるわけがない
大阪都ができようが、できまいが、今の議会制 「民主主義」 を何とかしなければ、我々の未来はない

国家が迷走している時に

独裁政権が国家を正しい方向に向かわせることもあるだろうが、太平洋戦争前夜のように軍部などによる独裁が、国家を破滅に導いた例も多い

「大阪都構想」 が 「大阪都抗争」 にならないことを祈る

 |