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No.282 tama

2014/01/10

ある早朝のこと

めずらしく夜間の患者がなく、ほっとしていた後期修医の佐伯航平は、夜勤の救急外来担当看護師から院内 PHS連絡を受けた

「腹痛の 14歳の男の子が来ます」

航平が救急室に行くと、まだ患者は到着していない
救外担当看護師が言う

「先生、また便秘か何かじゃないでしょうかね?」

暫くして、少年が両親に付き添われて救急室に入ってきた

中学生にしては体が大きく、両親に連れられて来たことには少し違和感があった

なんでも、未明に左下腹部痛で目が覚めたとのこと

少年をベッドに寝かせて腹部の触診をする航平

「 14歳の腹痛」 とくれば、航平の頭の中に真っ先に浮かぶのは虫垂炎だった
いや、虫垂炎 「だけ」 だった

「常に 2番手を考えよ」 と先輩から教えらていたのだが ・ ・ ・

少年が痛みを訴えるのは左下腹部

虫垂の位置ではない

先ほどのナースの言葉 「便秘」 が一瞬頭をよぎって消えた

一般に、虫垂炎の初期は虫垂以外の腹部が痛い

これはいわゆる 「内臓痛」 である

航平は考えた

「通常、虫垂炎の内臓痛は上腹部が多いが、別に左下腹部でもいいんじゃないか」

少年の右下腹部を航平が押すと、少年は顔をしかめた

「痛いの?」

少年は、声にはしないが頷く

「虫垂炎ならエコーで一発診断だ」

航平は少年を腹部エコー室に車椅子で案内して

エコーのプローブを右下腹部に当てた

プローブを強めに当てたり緩めたりしながら、腫れているだろう虫垂を探すのだが、それらしい姿は一向に画面に現れない

「仕方ない、CTか」

14歳という年齢を考えると、できるならば CTは避けたかったが、 CTを撮ると決めた航平は、その旨を少年の父親に説明した

すると、父親の答えは意外なものだった

- つづく -

この物語は全くのフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません

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