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No.284 スタンダード

2014/01/20

最近は、いわゆる 「スタンダード曲」 が生まれない

米国では 1930年から 50年代にかけて作曲された映画音楽やミュージカルからスタンダードが生まれた

スターダスト、 オーバーザレインボー、 マイフーリッシュハート、 枯葉、 バードランドの子守唄、 クライミーアリバー、 ワルツフォーデビー、 アイリメンバークリフォードなど、数百曲のスタンダードがあり、今でもジャズメンが演目にしている

さて、 1960年ころは

洋楽にせよ、歌謡曲にせよ、発表される曲の数は現代と違って格段に少なかった
加えて、曲の構成が今とは異なり、単純でわかりやくすく、誰にでも口ずさめるものが多かった

このことがスタンダードを生む土壌となったのだろう

日本では、昭和の時代、歌謡曲のスタンダードが、いくつも生まれた

その代表は 「上を向いて歩こう」 だと、僕は思う

1961年に発売されたこの曲の構成は、 Aメロ・ Aメロ・ Bメロ・ Aメロという極めて単純なものであり、今でいう 「サビ」 の部分がない

この歌では本来、 Bメロの部分 (幸せは雲の上に、幸せは空の上に) が、今でいうサビに相当するのかも知れないが、この曲で口ずさまれる分は Bメロではなく、 Aメロの 「うえをむういて」 の部分である

1963年リリースの 「高校三年生」 は

A・ B・ C・ D (あるいは A・ B・ C) の構成で、 「ああーあああー こーこーさんねんせー」 の部分が有名であり、サビに相当する部分であろうが、単純な構成に変わりはなく、かつ曲の演奏時間が短い

洋楽ではどうか

ビートルズが 1965年にリリースした 「イエスタデイ」 に至っては、曲構成は A・ B (verse-chorus) と極めて簡単明瞭であり、世界のスタンダードとなった

因みに 「イエスタデイ」 ではコーラス部分が曲を盛り上げ、サビに相当している


対する近年

Jポップの構成は極めて多様となり、かつ明確なサビを置くことが基本となった

いきなりサビから入る手法もあり、いきものがかりの 「ありがとう」 がそのいい例だ

サビを最大限に生かすためのサビ前のブリッジ

(一曲に一度しか表われない、マグロでいえば大トロに相当する?) にも独特の味があるが、これを自分で歌おうとすると、結構難しい

A・ A・ B・ サビ・ A・ B・ サビ・ ブリッジ・ サビ・ サビ・ Aなどといった複雑な構成もざらである

また、一曲の演奏時間が長く、 6分を超えるものも多い

全曲が長いし、サビがやたら目立つから、 「サビの部分しか歌えない」 という人が普通となった
これでは、いくら名曲でもスタンダードにはなり得ない

新しいJポップアーチストが次から次へと生まれては消え、世には新曲が溢れている

一曲の演奏時間が長く、しかもその構成が複雑であれば

カラオケで歌うために覚えようとしても時間がかかる
カラオケボックスで、それなりに歌うためには、原曲をフルサイズで何度も繰り返して聴く必要があるということだ

そして、せっかく覚えた新曲も

同席したメンバーが知らないことも多く、聴いてももらえない

「それ、誰の歌?」 と聞かれるのがオチだ

常に新曲を歌うことをモットーにしてきた僕にとって

近年のJポップ事情が、 「そろそろカラオケ引退」 を示唆しているかのようだ

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