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No.377 風上にも置けない

2015/04/13

「彼は医者の風上にも置けない」

などと使う、あれである

この言葉が、いつも引っかかっていた

「も」 をはずして

「風上に置けない」 ならば

「困った人を風上に置けば、その人の困った面が風下に流れているから、風下いる人はたまったものではない」

という、当たり前の事実になる

しかし、 「風上に」 の 「」 がわけを分からなくする

そんなにも 「こまったちゃん」 なら、そのこまったちゃん度を強調するためには
風上にいる人が通常なら影響を受けないような風下でさえという意味をこめて
「風下にも置けない」
とするのが分かりやすいというものだ

しかしあるとき、この言葉に関して国語辞書を引いてみたところ

「風上に置けない」

となっている

なーんだ、 「も」 を抜いた言い方がちゃんとあるのだ
でも、巷ではやはり、 「風上にも置けない」 が依然として主流である


現代日本語には理屈ではない表現が多い

形容詞に 「小 (こ) 」 をつけると、

程度がより強い、いや形容詞を強調する意味になる不思議

  • 汚い → こぎたない (見るからに汚い感じ)
  • うすぎたない (この場合は小でなく薄であるが)
  • 憎らしい → こにくらしい (本当に嫌いという感情が入っている)
  • 金持ち → こがねもち (結構な裕福な人をさし、もっと裕福な人は富豪?)
  • 洒落た → こじゃれた (結構おしゃれな)


「大丈夫です」 の不思議

最近は、拒否表現として、若い人はこれを普通に使う (僕は使わないが)

例 : 「僕と付き合ってくれる?」 → 「だいじょうぶです」

何か変だと思っていたが

考えて見ると、昔から似た表現があった

「これ食べない?」 → 「結構です」 、もしくは 「いいです」

この表現は使い続けられてきたから、今ではほぼ 「拒否」 とわかる


「気の置けない人」 とは

気が許せる、遠慮や気遣いをする必要がない親しい人
という意味だが、何か 「気が許せない人」 的ニュアンスに溢れている

だから、若い人 (そうでない人) も間違えていることが多い

「気の置けない人」 = 「気の許せない人」 と

では 否定形でない 「気がおける人」 とは実際使うのか?

調べて見ると、森鴎外は 「青年」 の中で
「いくら親しくても、気が置かれて、帰ったあとでほっと息をつく」
と用いているとか

とにかく、日本語は、表現がきめ細かい、と言うか、分かりにくい

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