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No.459 シトロエン

2016/11/11

医者仲間は お互いを 「先生」 と呼ぶ

たとえ 同級生でも、後輩でも 「○○先生」 と 呼ぶことが 慣例である
だから、僕の同級生、 S君のことは 「 S先生」 と 書くべきなのだろうが、敢えて S君と書く
尊敬をしていないわけではなくて、親しみをこめての 「 S君」 なのだ


大学の同級生である S君は

学生時代は さほど親しいクラスメートではなかったし、国試の勉強グループも異なっていた
おだやかな性格で、僕は 彼の怒る姿を 見たことがないし、人の 悪口なども 絶対に言わない人である

卒業後、僕は 彼と同じ大学医局に入局し、彼は 循環器内科学を専攻した

そして S君とは、研修医時代を 共に過ごし、医学部教員時代を 共に過ごした
彼は やがて 自宅で 医院を開業した

S君は 多趣味な人で

大学時代は オーケストラで チェロ奏者をつとめ、再生音楽 (オーディオ) には詳しく、彼の自宅には 僕の垂涎の スピーカーがあったことを 記憶している

彼は 車好きで、特に シトロエンを好んだ

大学医局時代、彼の運転する 2CVの助手席に 乗せてもらったことがある
シトロエン 2CVは、レトロな名車であるが、何せ 排気量が 少ないから 馬力はない
東名高速を 彼の運転する 2CVに乗せてもらって ドライブしたことがあるが、何とも 味のある車であったことが 印象に残っている



お互いに忙しくて あまり連絡を 取り合うことはなかったのだが

僕が 飯綱病院に 赴任して、ひょんなことがきっかけで 僕は 彼に、ときどき電話をするようになった

時には 症例の相談であったり、時には オーディオ機器の相談であったり、ときには 僕の愚痴を聞いてもらったりもした


考えて見ると

僕から 一方的に 電話をしていることが 大部分で、彼から 僕に 電話が来たことはなかった
僕は きっと 相手の迷惑も顧みず 一方的に 電話をしていたのかも知れない



そんなある日のこと、彼が 突然、飯綱病院に訪ねてきた

僕は 彼を 自宅に案内した
今度も 彼の車の 助手席に乗せてもらって
そのときの車は やはり 白の シトロエン
おそらく シトロエン ・ エグザンティア だったと思う
いまでは 手に入らないであろう 稀少車なのだと思う
相変わらず 趣味のセンスが良い彼の風貌は、 30年前と 少しも変わっていなかった
というか、僕の 想像通りの 彼であった

「気が向いたから ちょっと来てみた」 のだという

「ちょっと来てみた」 にしては 300Km以上の距離は、いくら 車好きとはいえ、かなり長い

僕は 診療中であったので

家の紹介も 周囲の紹介も そこそこに 別れてしまった
「折角 300Kmを ドライブして来てくれたのに、失礼なことをしてしまった」 と 反省しきり


それからも

彼の 物腰のおだやかな 優しい声が聞きたくなると、ときどきではあるが、僕は 相手の迷惑も顧みず、性懲りもなく 電話をしているのである

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