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No.468 数字マジックなどに関する雑感

2016/12/26

さきごろ

「日本一の長寿県は長野、長野県の日々の野菜消費量は 370g、野菜消費量が 全国最下位の愛知県と比べると 100gも多い、だから 野菜を多く食べれば 長寿になる」 といった テレビコマーシャルが流れた
すなわち、長野県に注目すれば 「野菜を多く摂ったほうが 長生きである」 という論理が成り立つというわけである
しかし、これは典型的な 数字マジックである

なぜなら

野菜消費量が 「全国で最下位」 の愛知県は、健康寿命では 日本一なのだ
愛知県に注目するならば、 「野菜を食べないほうが 健康寿命が延びる」 という論理が成り立つように見えるではないか

はじめに述べた長野県の例は

野菜関連商品の宣伝だから、データーの いいとこ取りをしたのだろう


全く異なった視点では

野菜消費量が 平均寿命を延ばしているわけではなくて、農業従事者が多い長野県は 生涯現役の人が多く、体や頭を使うから 老化が遅れるのかも知れない
都会で暮らす様々なストレスがないから 長寿なのかもしれない
他府県との人的交流があまりないために、長寿遺伝子がキープされているからなのかも知れない


さて、 「野菜を食べると長寿になる」 ことを証明するのなら

同じ地方に住む若い人 数万人を、野菜を 100g 200g 300g 400g食べる群に分け、彼らの寿命が尽きるまでの期間を調査して、野菜消費量と 寿命との相関係数を算出し、また 野菜が独立変数として寿命に関与することを明らかにするしかない
勿論、そんな実験など できるわけがないが


さて 長野県が 平均寿命日本一、愛知県が 健康寿命日本一なら

どちらが偉いのだろうか?

いろいろな見方ができよう

長野県は 確かに寿命が長いが、寝たきり状態で生きている人が多いのかもしれない
愛知県は、高年まで元気で、死ぬ時は早いのかもしれず、長野県が提唱する 「ぴんぴんころり」 は、案外 愛知県のほうだったりして

我々が知りたいのは

健康寿命を延ばす方法であるが、これに関しては、色々な、ごく常識的な憶測はあっても、信頼できる実験データは存在しない

ただし、僕は、健康寿命の長さだけが重要とは思わない

飯綱病院の 日々の診療では 90歳超えの患者さんは いくらでもいる
そして、彼ら 彼女らは 健康でなくても、とても幸せそうである

いくら健康であっても、早世しては残念である

「人生の冬までをちゃんと経験し、様々な病気を体験し、それを乗り越えての長寿」
「これでもか」 「お前らも いつかはこうなるんだ」 と 開き直って、堂々と老醜を晒し、人生やりきった感を味わう長寿こそ、楽しく有意義ではなかろうか

やはり、偉いのは 寿命の長さであると僕は思う

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