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chap.012 肺炎球菌ワクチン

2015/04/21

肺炎球菌ワクチンが 65歳以上を対象に定期接種化されました

昨年、(2014年) 10月のことです
その後、 65歳以上の人がいる家庭にはワクチン接種の通知葉書が届いているはずです

そもそも肺炎球菌ワクチンとは何か?

そして、ワクチンの肺炎予防効果がどれ程のものか?
こういった疑問を持つ人は多いことでしょう

高齢者になると

死因は がんよりも、肺炎が圧倒的に多くなります
その理由は、高齢者の嚥下機能の低下が主です
その中でも、脳血管障害の後遺症としての嚥下機能低下が重要です

口の中には何万種類もの雑菌が繁殖していて、

高齢になり唾液分泌量が減ると、夜間に口腔内に雑菌の数が天文学的数字にまで増えてゆきます
なお、寝る前に口腔内洗浄液によるうがいをするだけで、就寝中の雑菌の増殖はかなり抑えられるといいます


さて本題に戻って

肺炎球菌は一体どこからやって来るのでしょうか?
答は、多くの人の鼻咽頭粘膜に常在菌として住み着いているのです

肺炎球菌は病原性が高いので、寝ている間に口腔内の肺炎球菌を肺の中に吸い込んでしまえば、運が悪いと肺炎球菌性肺炎を発症してしまいます

肺炎球菌肺炎は 人から感染するものではないのでした

肺炎球菌は

きわめて毒性が強いので重篤な肺炎を引き起こしたり、敗血症、髄膜炎・髄膜脳炎を引き起こしたりします


肺炎を起こす菌は肺炎球菌ばかりではありませんが

頻度的に最も多く、また感染すると、とても重篤になり死に至ることもあるため、肺炎球菌性肺炎の発症を予防することこそが重要です

そのためには予防接種がとても有効です

もっとも、現在定期接種で使用されるワクチンは 「 23価肺炎球菌莢膜多糖体ワクチン」 ( PPSV23、製品名 : ニューモバックス) といって、 96種類ある肺炎球菌のうち、よくある 23種をカバーするに過ぎません
それでも侵襲性肺炎球菌感染症由来株の 7割をカバーするとされていて、日本の高齢者 1006人を対象にした比較試験で、このワクチンを接種することは肺炎球性菌肺炎の発症を 64%抑制したとするという報告があります ( 100%抑制するわけではない)

残念ながら PPSV23は

T細胞非依存性抗原なので、免疫反応が記憶されず、接種後、徐々に免疫原性が低下してゆきます
したがって、初回の接種後 5年たてば、 2回目の接種が必要となります
65歳の健康な人では 70歳くらいまでは肺炎球菌性肺炎にかかる確率はさほど高くありません
しかし、さすがに 75歳以上になれば肺炎球菌性肺炎の頻度は増えます

高齢になればなるほど、このワクチンの効果が発揮されることでしょう


最後に

同じく肺炎球菌ワクチンである 「 13価ワクチン」 について少し述べます

正確には 「 13価肺炎球菌結合型ワクチン : PCV13」 といい、製品名は プレベナー13といいます

このワクチンは

成人侵襲性肺炎球菌由来株の 48%をカバーするだけですが、特徴的なことは莢膜多糖体をキャリヤ蛋白に結合させることで T細胞依存性抗原に変換させて免疫記憶能を高めているということです
ですから PCV13接種は PPSV23の場合と異なり、鼻咽頭粘膜への肺炎球菌の定着をも防ぎます

残念ながら PCV13は

我が国ではまだ定期接種ではありませんが、米国疾病対策センター (CDC) では、まず PCV13を接種し、次いで PPSV23を接種することを推奨しています

つまり、両方のワクチンを接種することで、より強力に肺炎球菌感染を防止することができるというわけです

因みに

日本呼吸器学会呼吸器ワクチン検討ワーキンググループと日本感染症学会ワクチン委員会の合同委員会では、 PPSV23を接種したあと 1年を経過した時点で PCV13を任意接種する案を示しています

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