ホーム > 川口正展のなるほどザ・メディスン > chap.015 トランス脂肪酸

  • 救急の場合
  • 診療時間
  • 面会時間
  • 人間ドック
  • フロアマップ
  • 川口正展のなるほどザ・メディスン
  • Dr.ブログ

chap.015 トランス脂肪酸

2015/07/06

先日、外来診療中に、ある患者さんから

「この前テレビでやっていたのですけど、マーガリンが体に良くないって本当ですか?」
と聞かれました

実は、この問題は

今さらテレビで取上げるまでもなく、十数年前から議論があり、結論は 「本当」 ということになります

しかしこれには少々説明が必要です

最近のマーガリンは、とても美味しく出来ていてやわらかいのでパンに塗りやすいなどの長所があり、消費量は多いと思います
しかし、マーガリンの主成分は、植物油の不飽和脂肪酸に人工的に水素を添加して固形にした特殊な油脂であり、これを、 「トランス脂肪酸」 と呼びます

トランス脂肪酸は 自然界にはない人工産物で

人体に入ると、いわゆる 悪玉コレステロールである LDLコレステロールを増やし、善玉コレステロールである HDLコレステロールを減らす作用があるため、理論上は動脈硬化を促進することになります
そういった意味で 「体に良くない」 と言えるのです

トランス脂肪酸は

マーガリンだけではなくて、洋菓子を作る時に使用する ショートニング (一種のマーガリン) に多く含まれているので、 クリーム類、 クッキー、 パイなど、 スナック類や、 デザート、 スウィーツ類が大好きで毎日食べるという人は要注意です
また揚げ物のように、植物油を加熱して調理する際にも トランス脂肪酸ができるので揚げ物大好きの人も要注意です

世界の国々の状況を見ると

ドイツでは 早くから トランス脂肪酸の害が認識されていて、 トランス脂肪酸を含有する マーガリンの製造は、現在禁止されています
その結果、ドイツ人の トランス脂肪酸摂取量はきわめて低く、平均では摂取エネルギーの 0.66%に過ぎなくなっています

米国でも

販売食品中の トランス脂肪酸量の規制をしていますし、 カルフォルニア州や ニューヨーク市などでは外食産業に対して、一食当たりのトランス脂肪酸含有量を 0.5g未満にするような規制をしています

WHO (世界保健機構)

2003年に トランス脂肪酸は 総エネルギーの 1%未満にするべきとの勧告を出しています

では、日本人はどれくらいのトランス脂肪酸を摂取しているのでしょうか?

農林水産省のホームページ ( 2015年 6月 24日更新) によると、 「一人が 一日に摂取する量は 平均で 0.92~ 0.96gと推定される」 と記載してあります

いっぽう、日本栄養士会の ホームページには、食品安全委員会の推定として日本人では 0.7g、比較として米国で5.8gと記載してあります
また 同HPには、 「国内に流通する食品で 100g当たりの トランス脂肪酸の含有量が最も多いのが ショートニングで 13.6g、続いて マーガリンおよびスプレッドの 7.0g」 という記載があります


なお

「 トランス脂肪酸をどれだけの量、どれくらいの期間、摂取すると、どれくらい動脈硬化が促進されるのか、どれだけ疾病率が増加するか」 といった実験結果の統一見解が特にあるわけではなく、 トランス脂肪酸の 害ばかりが強調されている面も否めないと私は考えます

トランス脂肪酸は、自然界に全くないわけではなくて

牛のように反芻する動物の胃内でも産生されるため、牛肉、牛乳、乳製品にも微量ではありますが含有されています
ですから 「 マーガリンが悪く バターが良い」とは一概に言えないところです

トランス脂肪酸を離れて考えても

多くの植物性油は リノール酸という脂肪酸が主体であるため、これが動脈硬化を促進し、発癌を促進することが知られています
また、油脂は 1g当たりの エネルギーが高く、多く食べれば肥満につながります
「植物油だから安心」 は、現在ではもう通用しません

要するに

「油脂を含む食品の摂取量はあまり多くないほうが身のため」 というのが結論です

 |