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chap.016 人食いバクテリア

2015/08/28

先日、 「我が国において 2015年の人食いバクテリア感染者数が過去最多となった」 と報道されました

この疾患は正式には、劇症型溶連菌感染症といい、 1987年に米国で最初に報告され、日本では 1992年に最初の感染が見つかったという、比較的新しいものです

溶連菌=溶血性レンサ状球菌は

どこにでもいる バクテリアで、小児の風邪の半数近くの原因菌とされています
小児が喉を赤く腫らして熱発がある場合の多くは、この溶連菌が原因で、感染経路は飛沫感染です

この、どこにでもいる溶連菌が、何らかの原因で人食いバクテリアに変身するのです

「人食い」 とは、医学的には 「壊死性筋膜炎」 を起こすことにより分単位で筋肉の壊死が進み、未治療では 100%死亡に至ることを意味します
特に妊婦が感染すると進行がより速いといわれています

治癒するための対策は、できるだけ迅速に抗生剤による治療を開始することに尽きます

劇症型溶連菌感染症は

健康な成人男女 ( 50- 60歳代がピーク) に突然発症し、感染源が明らかでないことがほとんどです
「過去最多」 といっても、総数はそれほど多いわけではなく、国立衛生研究所の発表によると、今年の患者数は 8月 16日までで、全国集計 284人でした
ちなみに、これまでに報告された症例数は、 2008年 104人、 2010年 122人、 2012年 242人でした


それでは、

どこにでもいるような化膿性レンサ球菌と人食いバクテリアとの違いは一体どこだろうか? という疑問が生じます
しかし、残念ながら、劇症型溶連菌感染症を起こすバクテリアの毒素と一般の化膿性レンサ球菌の毒素との差はわかっていません

ただ、最近、国立感染症研究所から

「毒素の産生を調節している遺伝子に突然変異が起きることにより毒素産生が増加し、このことが激症化に寄与している」 と報告されました

また、宿主であるヒトの

毒素に対する感受性の強弱も関係しているのではないかとも考えられています

注) この文章の一部は、愛知県衛生研究所のホームページを引用しています

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