2011/02/19
大学医局が医局員を恒常的に派遣する病院のことであり、
病院にとっては医師の「安定供給」という利点がある反面、
大学医局にとっても、無給の医局員が関連病院に正職員として雇用されて、
臨床経験が積めるシステムであり、いわばギブアンドテイクの関係であったはずである
「将来的に関連病院が消えて行き、派遣先病院がなくなれば、入局者はいなくなる」
という認識はない
また、「今さえ何とかしのぐことができればそれでよい」
というような将来展望を欠いた認識のようにも感じられた
大学医局側には
「医師を派遣してやっている」
といった一種の驕りがあるように思えた
一般市中病院で研修する医師が増加し続けている反面、
大学病院で研修する医師が減少し続けているのが、全国的な傾向である
関連病院切りは、何もこの大学内科医局に限ったことではない
医師を一斉に引き揚げられ、
閉鎖に追い込まれた自治体病院の実例もある
しかし、決して大きくない規模の、
この大学内科医局に関して言及すれば、
今回の関連病院対策は、医局の将来にとってもどうかと思わざるを得ない
大学では十分な研修を受けられないと考える研修医は、ますます市中病院に流れるであろう
→ 大学病院での研修希望者は更に減少する
→ スタッフドクターの業務量が増えるため、
大学病院での患者に対する医療サービスの質が低下する
といった、悪いスパイラルに落ち込みはしないか
しかし、毎回、議論にもならず、ただ一方的な押し付けに終始した
町長、町会議員も大学へ交渉に足を運んだ
しかし、すべては無駄な努力であった
「行政が来る所ではない」と一蹴されたという
医師を派遣しない方針であるとも聞いた
「選択の基準」とは、この大学内科医局の場合、病床数であったのか
医療の質や実績ではなく、病床数のみが選択の基準であったとは
「中規模以下の病院の存在意義はない」と断言しているのに等しく、情けない話だ
K病院に残留することを決めた
すると、僕に賛同した内科医の幾人かが、
これも医局の意思に背いてまでK病院に残留することを表明してくれた
大学医局はこれを黙認した、
いやそうせざるを得なかったというのが正直な所かも知れない
その後、K病院では、
これを弾みとして、あらゆる方面から、
個別に医師の確保努力をした結果、
医局派遣に頼らず病院を運営できる最低限の数の医師が集まった
病院崩壊は一応回避できた
これには現市長であるM氏並びに、
当時の多くの関係者の皆様の力添えがあってのことと、心から感謝している
この一連の出来事は、
これまで医師の確保を、
大学医局からの人材派遣に依存し切っていたK病院にとって、
ある意味で良い試練であったのかも知れない
都市部では、実力、実績がある病院、
つまり、医師にとって魅力ある病院に人材が集まる時代になって行くであろう
1医局ではどうにもならない事情が働いていたことも知っている
むしろ、自分のかつては所属していた医局の将来を心配するばかりだ
将来の大学と市中病院との関係は一体どうなるのか、考えてみる
都市圏に位置する、いわゆる大規模基幹病院は、
黙っていても研修希望者が殺到するので、
選抜試験をして研修医を採用している現状である
その研修医の中から、
研修成績が優秀な者を将来、自院のスタッフドクターとして雇用することが可能なわけで、
それだけで人材が充足できるのならば、
大学医局からの派遣を受ける必要性はなくなって行くだろうことは容易に推測できる
「選択と集中」というが、
近い将来、選択されるのは、むしろ大学側になるのかも知れない
皮肉な話である
すなわち、
世界的に優れた研究成果や、臨床実績を出している大学、
講座(医局)には優秀な入局者が「集中」し、
逆に、そうではない大学や医局(講座)は、
優秀な入局者がなくなって、
その存在価値は失われ、
学問的、社会的に淘汰されていくことになりはしないか
効率を重視することが原則であるから、
世界的な優れた研究成果や臨床実績を有することが、
大学の当然の責務と考えられるからである
平成26年度、新病院が本格稼動するのが楽しみだ