2011/09/08
今回は、健診項目にある 「HbA1c」 の値の読み方についてである
最近の健診では、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という項目が測定結果に表記されている
意味がわかりにくい数字の1つだ
糖尿病関連の数字だが、血糖値ではない
ご承知のように 赤血球の中の酸素を運ぶ赤い蛋白質(血色素)だ
それが何で糖尿病と関係があるんだろう?
ヘモグロビンA1cは「A1c」がついていることから、ヘモグロビンそのものではないことがわかる
ヘモグロビンにブドウ糖が化学結合したものがHbA1cだ
糖尿病では血中のブドウ糖濃度が高いので、その分、ヘモグロビンには多くのブドウ糖が結合するから、HbA1c値が高い
だから、HbA1c値で糖尿病の診断と重症度の判定ができるというわけだ
HbA1c値は血糖値と違って変動が少ないから、今をさかのぼること1から2ヶ月の血糖値コントロール状態を知ることができる
嘘みたいな話が出てきたのは、恐らく1980年頃だったと思う
当時、SLセントラル病院に勤務していた僕は、病院内の講演会で、HbA1cという検査が可能になったことを知って、衝撃?いや、感動を覚えたのを記憶している
「これで糖尿病の診療が変わる!」
「ブドウ糖負荷試験」 といって、あまーい糖液を飲み、その後の血糖値の動きを見て糖尿病を診断した
HbA1cと空腹時の血糖値の組み合わせだけで糖尿病と診断できる
現在の基準では、HbA1cが6.1%以上、かつ空腹時血糖値が126mg/dl以上 (もしくは随時血糖値200 mg/dl以上) という条件さえ満たせば、糖尿病との診断がつくのだ
それが、今年は 6.2%、しかも空腹時血糖値が130mg/dl
A氏は、昨年は糖尿病ではなく、今年になって糖尿病が発症したのか?
しかし、血糖値はある時、急に上昇するのではなく、年齢と共に少しずつ上昇する
A氏は、たまたま今年の採血で基準値を上回っただけで、実は、昨年だって、糖尿病だったのかも知れない
診断基準とはそんな曖昧なものなのだ
しかし、基準がないと診断できない
空腹時血糖値があまり高くないが、食後の血糖値は高く、200から300mg/dlのこともある
食後の高血糖は動脈硬化を促進することが知られているので、軽い糖尿病でも、心筋梗塞や脳梗塞を若くして起こす
だから、糖尿病を 「軽いから」 といって侮ってはいけない
また、糖尿病の診断基準を満たさないけれど、食後血糖値が異常高値という人はとても多く、これらの人々は、動脈硬化を起こすリスクが糖尿病の人と同じくらい高い
食後血糖値が高い人をどうやって見分けるか?
HbA1cが 5%台後半の値を取るようになると、食後血糖値がきっと高い
正常者でも血中にブドウ糖は存在するので、ヘモグロビンにブドウ糖は結合する
だから血液中にHbA1cが存在しないわけではなく、だいたい4%台は存在する
だから、HbA1cが 4%台なら、恐らく、その人は、食後の血糖値は高くない
健常者でも、HbA1c値は、年齢とともに僅かに上昇していく
すなわち、血糖値調整機能は、年齢とともに退化していくのだろう
HbA1cが微妙に高い人はどうしたらいいのか?
それには、一回の食事カロリー摂取量を今よりも少なくする
すなわち、腹7分と言ったところか
「もう少し食べられる」 ところで止めることが大切なのだ
甘い食物は、できるだけ食べないこと
糖は、腸管からの吸収が速いので、食べた後、血糖値がすぐに、しかも大きく上昇する
きっと来年の健診では、HbA1c値が下がっているはずである