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No.070 旨いもの

2011/09/12

グルメ番組は相変わらず数多い

さすがにゴールデンでは稀だが、地域密着型などでは頻繁にお目にかかる
取材が簡単で、その割に視聴率が稼げるからなのか?

レポーターは言う

「外はさくさく、中はジューシー」
本来は甘くない食材を 「甘―い」
「お肉が口の中でとろける」
「フルーティー」 な香り
「クリーミー」
「しこしこと、歯ごたえのある食感」
「中から肉汁がジュワー」

その定型的な、これでもか、といった表現は

料理を、さも旨そうに演出する
しかし、これらのコメントや絵は、僕をして、それを食べてみたいという感情に駆り立てない
きっと、それぼどには旨くないことがわかっているから

僕は、もともと高級な (高価な?) 料理は苦手である

もちろん、高級料理など滅多に食する機会のない日常だが、懐石料理、フレンチ、イタリアン、中華、鮨など、いかに高価な料理でも、特に旨いと思うことは少ない
一般に、高価な料理は、期待ほどの代物ではないことが多いものだ

世間では高級料理とされる

北京ダック (ただの鳥皮) 、フカひれ (食感だけ) 、フォアグラ (脂肪の塊)
キャビア (生臭いだけ) 、トリュフ (黒く、見た目が悪い)
これらを本当に美味しいと思う人が、それほどいるとはいるとは思えない

でも、僕は高級店で食事をすることは好きだ

高級店は、店内が静かで、調度品の質や、窓からの眺めは良いし、従業員のサービスも丁寧である
つまり、雰囲気が高級なのだ
雰囲気が良ければ、極論ではあるが、供される料理など、どうでもよい

高額の料金は、その雰囲気に対する対価であり、料理に対するものではないと思っている

たとえば

酒が入ってしまったり、会食相手との会話に夢中になると、もう料理を味わうなんてことは到底無理というものだ
味どころか、どんな料理を食べたのかさえ、あまり思い出せない

酒は食前に飲む状況が多いものだが、これが旨い酒だったりすると、料理を食べるのが、むしろもったいない気持ちになる
料理は、僕にとって、あくまで、酒の味を引き立たせるための、口直しといったところだ

日本語の 「さかな(魚、肴)」 の紀元は 「酒菜」 だそうで、ここからは、あくまで酒が主役で、肴はあくまで脇役だったことが窺える

きっと、何年も修行を積んだであろうシェフや板前は

自分が丹精込めて作った料理を、僕がそんな風にしか見ていないことを知ったら、さぞ、がっかりすることだろう

さて、列車での移動時の楽しみの1つが、駅弁

せめてもの贅沢と思って、彩り豊かな、一番高価な物を購入しても、期待するほどの味の感動は全く得られず、いつもがっかりする

では、僕にとっての 「旨いもの」 とは何か

それは、

  • たっぷりバターをしみ込ませた焼きたてのトースト
  • 味付けの絶妙な玉子丼
  • 揚げたて天ぷら満載の天丼
  • ぴりりと辛い青菜炒め
  • わさびを添えた鯛茶漬け
  • 焦げ目をつけないで焼いた鯵の一夜干
  • 新鮮な胡瓜にもろみ味噌をつけた 「もろきゅう」
  • ふわふわ卵のオムライス
  • 脂の乗った鯖の味噌煮
  • 砂糖を一切使わない自家製の出汁巻

だったりする
自分の手で作り、
人の目を気にしないで、リラックスして食べられるものが最も良い

料理は食材の良さ、新鮮さなどが大切な要素であって

手間をかけたからと言って、それだけ旨いものが出来るわけでもない
料理にも 「シンプル イズ ザ ベスト」 は当てはまる

ただし、手間をかければ

きっと、見た目に美しい料理は完成する
要するに、料理は目で楽しむものと、味で楽しむものとがあり、両者は必ずしも一致するものではないのだろう

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