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No.189 肩こり

2012/11/19

高血圧症で通院治療している 69歳の女性

7月の定期受診日に 「肩が張って仕方がない」 と訴えた
どうも、普通の肩こりではないらしい

  • 血液検査をしてみると CRP (※) が 6.7と上昇し、血沈の一時間値 62mm
  • 37℃台前半の微熱がある
  • 血圧は降圧薬でほぼコントロールされていて、高血圧による症状とは考えられない

さて、病名は何だろうか?


以上の症状と、検査所見からは

一般にはリウマチ性多発性筋痛症 (PMR) を第一に考える
PMRは高齢の女性に多い疾患である
鑑別するべき疾患は頚椎症、繊維筋痛症など

治療的診断の意味もあり

ステロイド (プレドニゾロンPSL; 5mgを 1日 3回) を処方した

一週間後の受診時には

「肩の張る感じはすっかり良くなりました」 との返答
これで、PMRの診断は、ほぼ間違いないと考え、PSL 15mgを継続投与した

ここで問題点が2つ浮上する

一つ目

ステロイドの投与期間はどのくらいにするべきか?
通常、少量の維持量を比較的長期間投与するというのが教科書的であり、2年前後が多いとされている

二つ目

「PMRは側頭動脈炎の延長上の疾患であり、また悪性腫瘍を合併することが多い」 との記載が教科書にある が、今まで診断してきたPMRで、悪性腫瘍の合併は殆ど経験したことがない

悪性腫瘍発見のため、果たして、頭の先から足の先まで、すべて検査するべきであろうか?

症状の再発がないことを確認しながら

15mgを 10mg、さらに 5mgまで減量した

3ヶ月後の再診時、患者さんが言った

「暫く調子が良いので、あの薬 (PSL) はもう飲んでいません」 と

あー また、患者さんの判断によって内服が中止されてしまっていた

でも、血液検査は正常化しているし、症状の再発がないのなら、別にPSLなしで良いのではないか?
それとも、そもそもPMRという僕の診断が間違っていたのか?

そこで

腎、膠原病関係に造詣の深い、先輩のM先生に直接電話をして聞くこととした
M先生は、某有名市中病院の副院長をしている方なので、きっと多忙だろうと気を使い、結局、夕方に電話をする
M先生は快く相談に乗って下さった

M先生によると、日本のPMRは欧米のそれとは病像が少し異なり

  1. 男性にも結構発症する
  2. 側頭動脈炎の合併、もしくは続発は欧米ほど多くない
  3. 悪性腫瘍の合併の頻度も欧米よりも低い

ということであった

また、比較的短期間にPSLが中止できる例もあるとのこと

なるほど、納得

勉強になる
丁重にお礼を言って、電話を切った

医者も、僕の歳になると

自分よりもキャリアが上の先輩が少なくなる
僕の質問に、いつも的確に答えて下さるM先生は、グレートだ

※ CRP : 炎症の強さを示す指標

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