2012/12/21
軽い疲労感を残すのみで、爽やかな朝を迎えた
午前 4時ごろが一番眠く、疲労感もつのる
でも、 6時を過ぎる頃には、頭がリセットされるのか、なぜか疲れが吹き飛び、むしろハイテンションになっている
多分 10人を下らないはずだ
だから、できるだけ座らぬよう、わざと忙しく動きまわる
研作の勤務する東新記念病院では、当直明けの医師は午後、休んでも良いことになっている
とは言っても、建前は、午後は院内仮眠である
だが、午前中は勤務だ
その時だった
「胸が痛い」 と訴える、ひょろ長い青年が徒歩で救急室に現れた
本来ならば、午前の救急担当として、森田先生と石井女史先生がいるのだが、あいにく 2人は、たった今搬送されてきた多発外傷患者につきっきりで手が離せない
たまたま撤収が遅れて救急室に留まっていた研作は運が悪かった
そして、結局、青年を診る羽目になった
28歳という年齢の割には低すぎる
杉田は、 「自然気胸」 との確信を持った
聴診もそこそこに、彼は青年をレントゲン室に招く
出来上がった胸部X線写真は、彼の予想どおり、右の自然気胸を示していた
しかも虚脱率はかなり高い
「これは脱気術だな」
でも、できるならば、今すぐにでも脱気術を実施したい
ここでやろうか
しかし、救急室の看護師は、「先生、入院してから病棟でやってください」
研作は、仕方なく患者の入院入力を済ませ、患者は東 3階の 2人床、 3011号室に入院する段取となった
3階スタッフにはメラサとトロッカーカテーテルを準備するように電話で伝え、穿刺は 10時 30分と決めた
2人部屋の 3011号室には、別の患者も入室していて、その人も自然気胸だという
すなわち、 2人の自然気胸患者が同じ部屋で脱気術を待っていた
そして、須田は何やら忙しそうに口頭で指示を出している
もしかして、もう一人の気胸患者は須田先生の担当患者?
で、今から脱気術をする気?
「悪い、先にやらせてもらうから」
相変わらず強引な奴だ
と思ったが、須田の迫力に押された彼は、その言葉をぐっと飲み込んだ
「ま、いいか、 20分もすれば、次は僕の番だから、順調ならばだけれど」
と自分に言い聞かせた
― つづく ー
この物語は全くのフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません