2013/03/01
三浦 : 「ところで、この間、MCVが正常な出血性貧血があったんですよ」
「鉄欠乏性貧血ではフェリチン値やMCV値が低下すると思っていたんですけど」
杉田 : 「それは、出血の時期、それに程度によるんだ」
「たとえば、胃癌や大腸ポリープのように出血量は少なくても、長い間、じわじわと出血を続けると、体の鉄が減少するから、造血組織は鉄欠乏用の体積の小さな赤血球を作って、結果、MCVの小さな、小球性貧血となる」
「ところが 1から 3週間の間に、胃潰瘍などで多量の出血があるとすると、出血しなかった赤血球もまだ存在しているだろうし、骨髄もそんなに早く反応できないから、結果としてMCVは低下しない」
「鉄欠乏性貧血イコール小球性貧血というように公式的に理解していると、判断を間違うよね」
三浦 : 「あっ そうか そんなことは教科書には書いてなかった」
杉田 : 「医療なんて、教科書に書いてないことばかりだよ」
「つねに自分の頭で考えなければね」
三浦 : 「結局その人は胃カメラで大きな胃潰瘍があったんです」
杉田 : 「そうだろうね」
遠雷の音が聞こえる
雨が強まりそうな気配
この物語は全くのフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません