2013/03/06
英国の権威ある医学雑誌、ブリティッシュ ・ メディカルジャーナル (BMJ) に 「成人の一般健診は、罹患率や死亡率を低下させない」 というショッキングな論文が、昨年末に発表された
健診を受ける群では新たな病気が発見されるが、予想に反して、疾患の罹患率や死亡率は、健診を受けない群と、統計的に差が出なかったというのである
たとえば、健康にあまり良くないように思われ勝ちなコーヒー
「コーヒーを 1日 5杯以上飲む人は糖尿病になりにくい」 という論文も、少し前に発表された
しかし、BMJのこの論文は面白半分で研究されたとは思えない
そういった想定のもと、いや、 「それが当たり前」 という大前提のもと、健診が続けられきた
しかし、 「それが当たり前」 と、誰もが思っても、意外にも、その根拠 (エビデンス) がなかったのだ
健診をすることで死亡率が減るという大規模な調査結果がなかった
それを検証しようとした試みは偉い
「統計のマジック」 ということが言われるが、我々はこのマジックに引っかかってはいけない
これは、少し考えれば当たり前だ
健診に疾患発症予防効果があるはずなどない
本来なら、一人の人で、健診をした場合と、しなかった場合の死亡を比較するべきなのだが、当然こんなことはできない
だから統計処理で比較せざるを得ない
「自分は健康に自信がある、健康に良いライフスタイルをとっている」 と思っている、あるいは、健診を受けるなどという細かいことにいちいち気を使わない楽天主義の人が多いのかもしれない
楽天主義の人は免疫力が強く、癌になりにくいとも言われている
「もしかしたら自分は癌かもしれない」 と常に思い悩む、悲観主義の人が多いのかも知れない
結果、健診を受けて早期癌が見つかり治療で助かる人と、健診を受けないけれど癌が発症しない人とで死亡率に差が出ないかもしれぬ
そもそも母集団が均一化されていない統計の結果は、慎重に解析しなければならない
また、健診の質も問題となる
それなら死亡率に差は出ない
さらに、冠状動脈硬化を一般の健診で発見することはほとんど困難だ
すなわち、心筋梗塞による死亡は健診してもしなくても、罹患率、死亡率ともに差は出ないだろう
「観察結果」 を論文にする場合 (=現象論) は多く、こういった論文は、えてして一般受けして、新聞に載ったりもする
「○○する習慣の人は、しない人に比べて、××に罹患しやすい」 などの類である
さらにそれが実験によって実証されないと、科学論文とは言えないのではないか
残念ながら、実は、世の中には、そんな論文があふれている