2013/04/01
「意識があるのだし、家に連れて帰る」 との意向を示したが、
テンポラリーペースメーカが入っている間は入院して頂くしかないことを説明して、ようやく入院の承諾が得られた
と循環器内科チームは主張する
それは、かつて、酸化マグネシウム (塩類下剤) を投与されていた便秘患者が、同様に徐脈を起こし、血中マグネシウム濃度が異常に上昇していた症例を担当したことがあったからだ
カルシウムや マグネシウムはセット項目から除外されているので、普通に救急セットをオーダーすると、当然 Caや Mgの値は表示されない
間もなく結果が返って来ると、何と、その値は 8.3mg/dlだった
通常細胞の中に多く含まれていて、血液中の濃度は低く、基準値は 1.7 から2.6mg/dlに過ぎない
さらにマグネシウムが カリウムと似ている点は、血中濃度が極端に上昇すれば、徐脈、洞停止、房室ブロック、心停止が起きることである
普通の状態では、高マグネシウム血症は滅多に起きないから、疑わなければ検査しない所だ
下剤である酸化マグネシウムや、胃薬であるマーロックスを不用意に投与すると、容易に高マグネシウムを起こすことが知られている
クレアチニン値だけから見れば、慢性腎不全であることを見逃すかも知れない
しかし、松永さんが、小柄な高齢女性であることを考えると、この値は決して正常ではなく、潜在的慢性腎不全があると考えるべきなのだろう
長く排便がないということは、投与したマグネシウムは長く腸内に留まり、腸管からより吸収されやすい状況を作り出していたのだろう
カルチコールと ラシックスを投与された後、1回だけ人工透析を受け、血中マグネシウム値は正常化した
そして、パーマネントペースメーカーを植え込むことなく、日常生活に戻っていった
この物語は全くのフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません
参考 :
2008年に 「医薬品・医療機器等安全情報 No.252」 として、医原性高マグネシウムの喚起がなされた