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No.229 胸部X線撮影の落とし穴

2013/04/03

小栗俊太郎の朝

昨日の酒はすっかりさめたはずだが、少し頭が痛い

予約患者のリストを画面に表示すると、予約はびっしり詰まっている

この間に、救急患者や、初診患者が入り込んでくる
めりはりをつけた時間配分が必要だ

つまり、初診患者や、高齢で症状が多彩な患者はじっくり診察する

逆に、比較的若い、無症状の高血圧患者や高尿酸血症の患者は出来るだけ速く診療を終える

そのほうが彼らも喜ぶ

こうやって、時間の帳尻を合わせ

午前中の診療を、少なくても午後 1時までには終えなくてはならない
そのあとは病棟ワークがあるからだ


息苦しさを主訴に受診した初診患者、西方東彦さん

今年 72歳になる彼は、かつては、愛煙家で、かなりの量の煙草を吸っていたが、今は禁煙して 15年になる

まずは胸部X線写真

ということで、西方さんはレントゲン室へ案内された

診療放射線技師 : 「大きく息を吸って止めて下さい」

「パシャ」 (シャッターの音)

技師 : 「はい、楽にして」

ここまでは、よくある、ごく普通の風景だった


偶然レントゲン室の前を通りかかった三浦翔が呼ばれた

「三浦先生、すぐレントゲン室へ来て下さい」
ナースの緊迫した声

三浦が駆けつけてみると、西方さんはレントゲン室の床に横たわり、胸の痛みを訴え、息苦しいと言う

すでにマスクが装着され、酸素を吸入しているのだが、 SpO2は、 86%と低い
呼吸数は 38

一体、何が起きたのか?

原因はわからないが、呼吸不全が起きていることは間違いない

三浦は、血管確保を指示すると同時に、レントゲン室で素早く気管挿管して、バッグマスクで人工呼吸を始めた

しかし、どうだろう

患者の状態は良くなるどころか、逆に酸素飽和度はどんどん下がって行く

そればかりでなく、血圧低下が始まり、ショック状態に近い状態となってしまった

「どうしよう」

三浦は次の一手が浮かばない

「とりあえず、アドレナリンを側管して救援を呼ぼう」

ところが、三浦の処置を見ていた診療放射線技師が

すでに小栗に状況を連絡していた

小栗はレントゲン室のドアを開けると、三浦に向かって
「お前、何やってるんだ?」 と小声で囁いた

- つづく -

この物語は全くのフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません

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