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No.244 本物の過換気症候群・つづき

2013/05/20

前回の話 : 本物の過換気症候群

カルテを書いていた鮎川は

患者の微妙な変化に気づかなかったのだ

「しまった!」

鮎川は救急カートからアンビューバッグを取り出し、マスクで患者の鼻と口を覆い、アンビューバッグを揉む

しかし、サチュレーションモニターは、まだ低下を続ける

鮎川は深く、ゆっくりとバッグを押し続ける

2分も経っただろうか

サチュレーションモニターが上昇をはじめた
いったん上昇を始めると早い

液晶の赤い数字はどんどんと上がり、ついに 98%となろうとするころ、患者は自発呼吸を始めた
そして意識を取り戻した

もはや、彼女の過換気はおさまっていた


鮎川は、以前、先輩から

「過換気症候群を甘く見るな」

と教えられていたことを思い出していた

一見、過換気症候群に見えるような他の疾患があること

例えば、糖尿病性ケトアシドーシスの過呼吸

また、本当の過換気症候群だったとしても

血中の炭酸ガスが呼出され過ぎるための血液アルカリ化で、意識が薄れて、呼吸が止まってしまうことがあること

そして、それを放置すれば、低酸素血症となること

すなわち

呼吸が止まれば血中の二酸化炭素濃度が上昇して正常値に向かうが、その上昇速度よりも、呼吸停止による血中酸素濃度の低下のほうが早いのだ

鮎川は今回の出来事で

「過換気症候群は、自然に落ち着くもの」

と考えていた自分の常識を変えざるを得ないことを知った

この物語は全くのフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません

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