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No.267 東京

2013/10/17

学会で東京に行った

早朝に出発
目指すは平河町の日本都市センター会館

建て直されて高層ビルとなっているはずだ
学会などで何十回も東京には行っているが、その殆どが都庁跡に建った国際フォーラム
都市センターは久しぶりだ

その昔、新宿区原町というところに下宿していたことがある

東京女子医大に通うためだ
初めて東京で生活を始めた頃、すべてが新鮮で、電車に乗っている人も、何だか 「東京人」 という外国人に見え、緊張したことを思い出す
さすがに今ではそんな感覚はないが、相も変らぬ人の多さにはうんざりする

しかし、平河町界隈は休日とあって、人通りも少ない

改築され、高層ビルとなった都市センター会館は、大理石の床と壁
何と豪華なことか

内科学会の関東地方会だから口演ばかりだ

内科学会の地方会というのは、卒後数年目の若い医師の臨床症例発表会だから内容はわかりやすく、ツッコミどころ満載である

また、自分の知らない豆知識も得ることができる
聴衆もまばらで、群集が大嫌いな僕でも馴染める

意外な穴場学会なのだ


陽が傾きかけた頃

学会はまだ終っていないが、長野に着く時刻を考えて、少し早目に帰途につく
都市センターに来る時の習慣で、往路は永田町駅で降り、復路は赤坂見附駅まで歩く
10月も中旬と言うのに、暑い

かつて、いつも右手にそびえていた、通称 「赤プリ」

丹下健三設計による独特のデザインの、バブル経済を象徴した、あの超高層高級ホテルは、開業 30年を待たず、すでに廃業して跡形もなく取り壊され、周辺の景観は、がらりと変わっていた
しかし、隣接していた赤坂プリンスホテル旧館は、歴史的建造物として残すとのことで、旧李王家邸を忠実に再現するための改修工事中だった

片側4車線の外堀通りを走るのは

タクシーと、ぴっかぴか黒塗りの高級車ばかり

長野県では滅多にお目にかからぬ超高級外車も、至る所に普通に走っている
間違っても軽自動車は走っていないし、軽トラなどは論外だ

ここには 「不況」 のひとかけらも見つけられない

東京の富裕層はあくまで富裕で、国民の経済格差は広がるばかり
経済格差の存在は自由競争原理の資本主義経済のもとでは当然の真実だが、目の当たりにすると虚しい

帰りの新幹線 「あさま」 の中

所在無く、座席に備わっているフリーペーパーを何気に見る
するとそこに
ダイヤ 「改正」 の文字
ダイヤを正しく直す?
それでは今までのダイヤは間違っていたと言うのか
日本語は正確に使いたい
ここでは 「改訂」 が正しい

ついでに言うなら、いまさら再び 「憲法改正」 論議が巻き起こっている

これも正しくは 「改訂」 のはずだ
現政権は、 「日本国憲法が間違っている」 という前提に立つから 「改正」 となる
「間違っている」 という根拠はどこにもないから議論になっているというのに

暇にまかせて、これも備え付けられている JRのショッピングカタログを見る

最初のページから暖房器具の写真が並ぶ
そしてどの機種にも 「最大電力消費 1時間 9円」 などと、経済性が強調されている
「電気要らず」 とうたった寝袋のページもある

民の購買力が依然改善していない実感が伝わってくる

物価だけが上がって、収入は減り続ける
都合の良い一部のデータだけを取り上げて 「日本経済は回復基調にある」 とするのは誤認であり、国民に対して失礼だ

1時間 40分後、長野駅のホームに立った

ああ、この人のまばらさが、僕にはとても心地よい

風は思いのほか冷たい

すでにあたりは真っ暗だ

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