2013/12/12
「本は大切な部分だけを切り取ってファイルし、あとは分解して捨てる」
などと書いたことがある
もちろん、そういう場合も多いが、読みどころ満載の本に関しては、これはできない
裏にも重要な部分があるから、むやみに切り取るわけに行かないのだ
それでは何のための読書かわからない
本は二度読みしてこそ、その価値を発揮する
重要な部分を線で囲んだり、マーカーペンを引く
引き出し線をつけて、欄外に赤字や緑字で、自分の思ったことを書き込む
こうすることで、読み返しが容易になる
しかし (だから) 僕の本は、みんなきたない
小説は、しょせん一人の作者が、その想像力や妄想力で作り出した、虚構の世界に過ぎない
しかし、源氏物語の時代から、我が国では物語ものが各時代で読み続けられてきた
楽しみの少なかった時代は、小説は娯楽として読まれたことだろう
読み進むうちに、自分があたかも登場人物の間に存在しているような錯覚に陥ってしまう場合もあるだろう
登場人物に感情移入して、その生き方に共鳴し、涙することもあるだろう
ノンフィクションの部分も適度に散りばめると、真実味を帯びてくる
だから、自分の全く知らない世界や、職種、業界の内部を垣間見ることへの興味もあるだろう
しかし、興味ポイントは、そのストーリーではない
自分の知らない世界を覗くことや、登場人物の会話のナイスなやりとり、うまい段落の分け方、 「どこかで使える」 と思う名言、それに、所々に現れる、作者の人生観や物の見方とか思考
これらの要素のある小説は僕にとって興味がある
そして、それら興味のある部分に、やはりマーカーを入れる
だから、僕の本は、小説もきたない
大した内容ではないのに、何かのきっかけで売れたとすると
「今売れています!」
「遂に 200万部突破!」
「映画化決定!」
みたいな宣伝がメディアなどを使って日本中に流れる
そうすると、
「今売れているなら、今話題の本なら、とりあえず買っておこう」
という人が買う
「多くの人が買うから」 とか 「話題について行くため」 などの理由や心理で、流行のものを買う文化があるから、その本は連鎖反応でどんどん売れる
「出版不況」 と言われる中にあっても、売れる本は結局、売れに売れて、結果、 「ベストセラー」 になる
素直でない僕は、そう信じているからだ
あろうことか、先日、書店に行った時、正面に平積みにされていた、あのベストセラー小説 「永遠の零」 を、衝動買いしてしまった
すでに文庫本化されて、手ごろな価格になっていたことが、購入動機の一因だったかも知れないし、作者に興味があったからかも知れない
600ページほどもある分厚い文庫本
歴史家とは縁のない作者の、丁寧な取材や、太平洋戦争時の空中戦のディテイルに興味を引かれ、案の定、またマーカーばかりになってしまった