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No.292 病状説明

2014/02/14

医療行為は民法上 「準委任契約」 という契約であるらしい

一般の 「委託契約」 が 「完成」 を最終目的とするのに対して、 「準委任契約」 とは、物の完成ということが約束されていない
すなわち、医療契約とは 「受診患者を必ず健康状態に戻す」 と約束するものではないということだ

だから

「助かるつもりで入院したのに死んでしまった」 ということもありうるし、これを許容せざるを得ない
ミスもなく、その時代の医療水準に見合った治療をしていることが必要条件であることはもちろんであるが

なお、医療以外の 「準委任契約」 としては、保守点検とか、企画設計などがあるという

さて、医療を委任された側は、依頼者側に経過報告をせねばならない

だから医師は、現在の治療経過、患者の状況や今後の見通しなどについてこと細かく説明をする

これは入院時だけでなく、入院期間中に何度も行うことが多い

特に、何か検査を実施した際は、結果が判明次第、それを伝えることが必要である

これら病状説明、経過報告のことを

現今では アイシー( informed consent : IC )と言っている場合が多い
あえて訳せば 「情報を伝えた上での合意」 となる

病状説明=IC ではないのだが、簡単なので全て 「IC」 と使うことが多い

因みに以前は 「ムンテラ」 などと言っていた

このICが色々な意味で難しい

外科の場合は手術法を図示するなどして、また術後経過や起こりうる合併症、手術の成功の確率などを数字で示して済む場合が多いだろう

しかし、内科入院患者の場合はやや異なる

内科では、そもそも 「原因がわからず、症状があるから病名を特定する」 という入院も多い
だから、 「一体私は何という病気なのですか?」 と聞かれても、早い時期では回答できないこともある
その場合、検査結果から推定できるいくつかの鑑別診断を示すことくらいしかできない

さて、診断が決まったとする

しかし、治療法が 1つしかないのなら話は簡単
現実は、患者の年齢や意向を考慮に入れて治療法を決める

治療は外科系と異なり、薬物療法が主体だが

薬物には副作用がつきものだし、薬物に反応しにくい場合もある
これらは患者側の遺伝的要因によることも多いのだが、そんな場合は 2の手、 3の手を考えなければならない

肺炎など、画像を見ながら説明しやすい

いわば比較的 ICがしやすい疾患もあれば、専門用語を駆使しなければならない複雑な病気もある
もちろん、専門用語をわかりやすい日常語に置き換えて説明するのだが、疾患概念が一般の人には理解しがたいこともある

病状が改善していたはずの患者が、突然急変することもある

特に高齢者では多い
これには、偶然、別の疾患が併発してくることもあれば、原疾患の増悪もある
内科医はその都度、患者や、その家族に病状説明をすることになる

ICは、診療時間とは別の時間帯を設定しておこなうことが多いから

医者にとっては 「煩わしい」 と感じる人もいるかも知れない

しかし、ICの効用は

実は医者の側にも大きなものがあると、常々僕は感じている

  • ICをすると、患者の病態に関して、自分の頭の中が整理される
  • ICをしている時に、更なる検査や治療のアイデアが浮かぶこともある
  • 患者側から質問されたり、患者の家族の意外な証言で、今まで知りえなかったことに始めて気づくことだってある

現状を患者やその家族に頻繁に伝えることは、ある意味、治療よりも大切なことかも知れない

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