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No.309 勤務医・開業医 あれこれ

2014/04/01

「先生は開業しないの?」

これまで、しばしばこの質問を受けた
もういい歳になってしまった僕に、さすがにこんな質問をする人は、今ではもういないが・・・

当時

「勤務医はいつか開業するのが当たり前」
みたいな文化があったことは事実

また、僕の出身大学の卒業生は、開業医の子弟が多く、結局、親の医院のあとを継ぐ形で勤務医を辞めていった人も多い

開業した友人から

「開業はいいぞ」
と、開業のメリットをさんざん解説してもらったこともある

しかし だ

僕が思うに、医者には開業医に向いている人と、不向きな人とがいる
僕は明らかに後者だ
だから開業を考えたことはない

(親の) 医院の継承」 は 地盤、 看板、 かばん が揃っているから

スタート時から経営上のリスクは極めて少ない
しかるに僕の家は開業医ではなかったから、開業のリスクはそれなりにある

勿論

そんな医者だって、勇敢に開業していった人達も多い
そして彼らは、殆どが成功者になった

いや、むしろ、開業医の親を持たない、ゼロから始めた人のほうが、医院規模を拡充し、サテライトを作り、老人保健施設やリハビリセンターやデイケア施設を併設し、組織をグループ化して、 「大成功」 をおさめている

僕は

医院経営という財政的側面と、医療という学問的側面を両立させるほど器用でないから、開業には興味がない
そして、医療グループを拡大させて成功をおさめている人達を羨むこともない


僕が勤務していた、愛知県にある地域の中核病院 (仮に「 B病院」) の診療圏内には、約 80軒ほどの医院があった

B病院は

医院からの紹介患者を入院治療して、元気になったらその医院に帰ってもらうことにより、開業医院と良好な関係を保っていた

すなわち

開業医は入院患者を紹介してくれる 「お客様」 である
B病院から少し離れた所には、全ての診療機能をそろえた大病院がいくつもあったから、 「是非B病院に紹介して下さい」 ということになる

ここからだけでも

B病院と開業医の立場の違いがわかる
そう、開業医のほうがB病院よりも、立場が遥かに上なのだ

当時 214床の B病院は

24名の医師を擁し、高度な医療をのぞいては、殆どの症例に対処できる体制であった

B病院では、月一回のペースで 「症例検討会」 と称して

紹介してもらった患者の経過報告会を、開業医を迎えておこなっていた
軽食とドリンクのサービスつきで
ある分野では、近隣大規模病院のレベルに決して劣らないことをアピールしたりもした

これも、紹介患者数を保つ戦略であったことに他ならない

また、院長が交代すると

新院長は診療圏内にある 100軒近い開業医にいちいち出向き、就任挨拶をした
事務長とともに、手土産を持って
これも紹介患者を期待してのことである

こんな戦略が功を奏してか、 B病院の病棟は、紹介入院の患者が多かった


今、僕が勤務する飯綱病院の近くには、医院があまりない

それに、飯綱病院自体が開業医の集まりみたいな面もあり、数軒の例外を除いては、近隣医院との連携はあまり実感しない

「これがきっと、地域の病院の本来の姿なのかも知れない」

と、今、回顧する

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