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No.237 食欲がない

2013/04/25

鮎川真奈美は、今日も半スッピン状態で外来診療を開始した

43歳の、伊佐木結衣さん

初診患者である

子宮摘出歴があるので、卵巣は残してあるというが、月経はない

最近、食欲がない、食べなくてもすんでしまう

妙に疲れやすい、何をやるにも全くやる気が湧かない、など、多彩な症状を訴えて、外来を受診した

一見すると、ごく普通の女性で、笑顔もあり、 「いかにもだるそう」 といった感じもない

診察しても

特に、異常と思われる理学的所見はないし、食欲がない割には、痩せてもいない

甲状腺機能も含めて血液検査をしたが

血中ナトリウムが 129meq/L、血糖値が 72mg/dlと、いずれもやや低い程度で、他はほぼ正常範囲内
この程度の検査値異常は、正常人でもいくらでもあることなので、問題の解決になるのか、はなはだ疑問である

とりあえず 「精査目的」 ということで入院とした

入院はしたものの、検査計画が立たない

汎下垂体前葉機能低下症であれば、出産後が多いし、恥毛、腋毛の欠落がみられる
また、甲状腺機能低下症も伴うはず

うつ病? 精神科疾患?

いや、その前に身体的疾患の存在を否定しなければ

食欲がないのなら胃癌や胃潰瘍?

それとも脳腫瘍?

しかし、胃カメラも頭部CTも正常であった

「自分がわからなければ他人に相談」

鮎川はいつも、そう考えている
つまり、深く考えるのは苦手

別に他力本願というわけではない
「三人寄れば文殊の智恵」 というわけだ

東新記念病院では、内科カンファランスを滅多にしない

かつては盛んにやっていた時期もあった
しかし、なにぶん、今は医師に時間の余裕がない

一人の医師の担当する患者数が多すぎる
毎日 70人前後の外来患者の診療に加え、 30人前後の受け持ち入院患者の検査、処置、投薬、指示出し、患者家族への病状説明、などなど
加えて、種々の委員会への出席やら訪問診療やら産業医活動としての職場巡視もある

内科医が一堂に会することのできる時間が持てないのである

しかし、この際、そんな気遣いなどしている場合ではない

鮎川は後輩のくせに、幾人かの内科医に召集をかけた

- つづく -

この物語は全くのフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません

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