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No.403 タラレバ その2

2015/10/01

1. 1931年の柳条湖事件後の政府の不拡大方針を遵守するか否かの選択
2. 1937の盧溝橋事件の際、閣議決定事項である不拡大方針を遵守するか否かの選択

柳条湖事件、盧溝橋事件とも、史実は、政府決定に反して現地の関東軍が独断で戦線を拡大したわけで、政府はこれを追認しているところから、 シビリアンコントロールが全く機能しなかったところに問題があった
しかし、ほぼ軍政下ともいえる状況の中では、 シビリアンコントロールもあったものではなかったことであろう
要するに、日清 ・ 日露戦争の連勝後であり、勢いづいた軍人達が政治の主導権を握るようになっており、軍事力強化のみに全ての国力が注がれ、軍人でない政治 ・ 外交担当者が軍部を統制することがむずかしかった、つまり政治 ・ 外交が未熟だったということであろう

3. 1940年の 「三国同盟」 を締結するか否かの選択

三国間条約に関しては軍部内でも賛否両論があった
賛同した人の代表は 陸軍大臣 (板垣征四郎) 以下の陸軍軍人、反対したのは 海軍大臣 (米内光政) 、次官の 山本五十六、軍務局長の 井上成美などである

米英の立場をよく理解していた海軍は、 「そもそも、三国同盟は、米国の西部戦線への参入を阻止することをもくろむ ドイツにとって有利なだけで、日本にとっては ドイツとの同盟が米英を刺激して、悪い結果をもたらす」 と考えていた

海軍が強硬に反対したのにもかかわらず、 「ドイツは信頼するに足りる」 との見解を持つ陸軍の親独派に押し切られる形で同盟は締結された
そして、この時も、本来は政府が決定する事項であるにも拘わらず、政府そのものが軍人で占められていた軍政下であったため、正しい政治的判断を下す土壌は全くなかったと言って良い
同盟締結の奏上を受けた昭和天皇は危惧を表明したが、もはや天皇は国家の意思表示を左右できる立場にはなかった

4. ハル ・ ノートとは、米国の最後通牒とでもいうものであり

内容は、日本軍の中国、仏領インドシナからの全面撤兵と、蒋介石の国民政府のみを中国政府として認める (満州国の否定) というものであった

ハル ・ ノートは、
「当然日本政府がこれを容認するはずがなく、日本が戦争を仕掛けて来る絶好の契機となる」
との思惑で作成された文書とも考えられている

だから (日本が、もし海軍の意見にしたがってドイツとの同盟を締結せず、) これまでの植民地政策を見直し、 ハルの提示した条件を全面的に受け入れていれば、 ハルは拍子抜けしたに違いない
そして日中戦争は終結 (敗戦でなく終結) 、石油禁輸の解除がなされた可能性が大きく、仏印からの撤兵により、援蒋ルートは確保され、中国の国民政府は西側諸国の一員として、日 ・ 米 ・ 中の新しい同盟体制ができていたかもしれない

その場合、当然ながら太平洋戦争は行われず、日本や連合国に多くの人的、物的損害をもたらすことはなかったはずだ

また我が国は莫大な戦費を使う必要がなかったから、蓄えた富により急速に発展し、 「戦勝国」 の一員として国連常任理事国として世界を リードする一等国としての地位を確立していたかも知れない

「太平洋戦争前夜には、 ルーズベルト大統領はすでに日本を叩くと決めていた」 と一般的には考えられているが、真実は、戦いなかばで病死した ルーズベルト本人しか知らないことである

対中、対米 (連合国) 戦争に発展したのは、軍部が 「国際社会における日本の位置」 という視点を重視せず、 「紛争は軍事力で解決できる」 と考え、自らのメンツ (あるいはプライド) 偏重、陸軍 ・ 海軍の対立という構図、加えて、日本が遅れて列強の仲間入りして、列強のような植民地を殆ど所有していなかったことに対するあせり、などが事の本質を見誤った原因の大きな部分を占めているとも僕は考える


「もしもあの時、こうしてい タラ
「もし、ああしてい レバ

と、つい考えがちだが、歴史家からは 「歴史に タラレバ はない」 と突っぱねられる

しかし、 タラレバ を考えることは、決して無意味ではないと思う

我々は、歴史から学ばなければならない
少なくても近代史においては、 「もしあの時、別の選択をしていれば、歴史はどう変わったのだろうか」 と妄想してみることは、意味があるのではないだろうか

少なくても僕はそういう妄想が好きである

今回の 「安保法案」 に関しては

「国民が戦争に駆り出される」 といった極端な意見や、 「とにかく戦争をするのは反対」 という意見、 「自衛隊自体が違憲」 など、さまざまな反対論があるため、国民の同意が得られにくいのだが、 90年前とは違い、今の日本は シビリアンコントロールのもとで軍事活動をする体制が出来上がっている法治国家であるから、政府が政治判断を間違えない限り、かつてのような軍事の暴走などありえないと、僕は考える

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