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No.442 格差社会

2016/07/06

最近 特によく耳にする言葉だ

本来、世の中から 格差 (=不公平) をなくするなどということは 出来るはずがない
格差社会を なくするという思考そのものが 不健康であるとも感じる
さらに 資本主義経済では 貧富の差が存在することは 当然の帰結であり、いまさら この事を 問題にすること自体には いささか違和感がある
ただ、特に 最近の日本では 国民間の経済格差が これまでにないほど 大きくなっていることは 事実である

戦後 間もなくの頃

日本の国民は 総じて貧しくて、ここでは 貧富の差なんか 問題にならなかったし、問題にしている余裕もなかった
高度成長期に入ると、国民みなが それなりの生活水準を保つことができるようになり、「もはや 戦後ではない」 とか 「国民総中流化」 などの言葉が生まれたほど 経済的には 平等感があった
しかし、注目すべきは、この時代、確かに みな平等であったかもしれないが、決して 豊かではなく、でも 「それなりに 満足した生活」 を送っていたという 事実である

しかし、日本が 経済的に成熟し

ようやく 一等国として 認められるようになると、事情は 変わってゆく
熾烈な 国際競争に打ち勝つために 企業は コスト削減を 徹底する必要に迫られ、支出の多くを占める 人件費削減のため、 1984年ごろから 正規社員の リストラや、派遣労働者の雇用を はじめた

当初は 500万人にも満たなかった 非正規労働者数は 今や 2000万人を超える

正規労働者数が 3000万人程度であることを考えると、日本の企業は いかに非正規雇用に 依存しているかがわかる
正社員と 非正規社員との間の待遇には 天と地の 格差があるが、すでに 非正規社員は 4割となり、さらに 毎年じりじりと 増加を続けている
国民の 経済格差が広がるのは 当然である
正規社員になることが叶わず 生涯フリーアルバイターで暮らす人も 将来増えることだろう


経済格差は 社会的地位の格差も生み出す

裕福な家庭に生まれた 一部の幸運な子は、恵まれた教育を受け 一流大学に合格するだろうから 社会的地位の高い職業に就くことができる
「頭の良い人は、友人や 伴侶として 頭の良い人を選ぶ」 という 傾向があるとも言われるから、彼らは 自分の伴侶として 才色兼備の 良家の女性を選ぶことに 不自由しない
女性であれば、親が裕福で、恵まれた環境で育った人は、高学歴、秀才の イケメンを 伴侶に選ぶことは たやすい
必然的に 次の世代も 裕福で 頭が良くルックスもよい
社会的地位の高い家庭を 築いてゆくことになるのは 目にみえている

まさに 身分制度社会に似た 「地位格差社会」


日本には 昔から 「みな平等」 という 意識が強かった

歴史において 貴族、 武家、 豪商など、地位の高い人達は 確かに存在したが、それは 一握りに過ぎず、国民の 大多数を構成していたのは 大して裕福ではない 農民、 商人、 職人であり、彼らの間には 大きな経済格差などなくて、恐らく 貧しいなりに 充実した生活の中で 格差意識もなく、それなりの 楽しい日々を 過ごしていたはずだ
たとえば 落語には 長屋暮らしの庶民や、彼らの 日々の気楽な生活意識が 如実に表現されているものが 多い

このように 日本には

以前から培われてきた 「皆平等」 の意識が 根強く残っているからこそ、近年の 所得格差が 社会問題となるのだろう
所得格差のために 教育の 機会均等の原則が 守られないのも 悲しい現実である

しかるに 世界を見渡せば

GDP 1位の 米国は、はるかに激しい 能力格差社会、 地位格差社会、 トランプ候補を出すまでもなく 人種差別社会であるし、英国や インドは、いまだに 厳然とした 身分制度が生きている社会である


経済格差是正のためには、 「富の 再分配」 が 必要となる

しかし、経済格差是正を目論んだ 社会主義 ・ 共産主義国家 が ことごとく失敗したように、富の 再分配の実践は たやすいことではない

近年、我が国では

相続税課税対象者の 範囲を広げ、路線価を上げ、富の 再分配を目論んでいるようではあるが、人工知能や ロボット化による 将来の 雇用減少を考慮すると、富の格差は さらに拡大してゆくことが 懸念される


「ベーシックインカム」 という タームが しばしば取上げられ

仮に 日本で 実施すれば 月額 8万円程度とされている
スイスでは ベーシックインカム導入可否の 国民投票が 実施されるというが、その額は 日本円で 月 30万円相当を 想定しているというから 驚く

「働かなくても 働いても 全員月額 8万円給付」

が 日本の経済格差是正、ひいては 日本の経済発展に 果たしていかほどの 効果があるものかを 予測する方法は 一体どういったものなのだろうか?

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