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chap.025 入浴の危険性

2016/05/12

日本では 入浴中に浴槽内に水没して死亡する例が 後を絶ちません

入浴時に 浴槽に浸かるという習慣は 海外にはあまりないので、入浴中の溺死は 日本人特有の現象と言ってよいでしょう

2010年の人口動態統計では

「浴槽内の死亡」 が 3977人ですから 交通事故死と ほぼ同数ということになります
また、 2011年の東京 23区内での統計から 推計した全国の 「入浴中急死」 が 約 1万 4000人という数字もあります

高齢者突然死の 24.6%は 入浴中に発生しており日本人の 平均入浴時間が 約 20分と、一日の 2%に満たないことを考慮すると、入浴は 急死の危険性が 飛び抜けて高い行動である」 と、堀進悟氏は 述べています (内科専門医会誌)

浴槽内での 溺死のメカニズムについては いろいろな仮説がありますが

一人で入浴することが多いため、水没する瞬間が 目撃されることがあまりなく、その実態は 明らかでありません
「体温よりも高い状態が維持されることによって 末梢血管が拡張して 血圧低下し、脳血流が 減少するために 失神して 浴槽内に沈む」 という説が 一般的ではあります

剖検で 気道に 微細泡沫塊を認めると 確実に溺水と診断できますが

浴槽内に沈んでいても 気道内に 微細泡沫塊を認めない症例もあります
これは 水没して 気道に水が浸入しようとすると、喉頭痙攣が起きるので、喉頭が締まり、これによる窒息で 死亡することもあることを 示しています

また 入浴中急死の 80%以上は 湯温が 42℃以上であったとの 報告があります

ちなみに 日本人の入浴湯温は 夏が 38℃、冬が 42.3℃です (西山繁)

易学的には 女性が 男性の 1.4倍と多く

年齢では 60歳を超えると急増し、 70歳代が 最も多くなっています

入浴中の 急死を避けるには

  • 湯温を 39~ 41℃程度にする
  • 長湯をしない
  • たとえ意識を失っても 水没しないような構造の浴槽、もしくは 水深とする

などの対策が 必要となります
今後、 「鼻が水に浸かると それを感知して 自動的に浴槽の水を抜く」 、など、何らかの フェールセーフの安全装置が開発されると、浴槽内での死亡は 激減することでしょう

なお、一般的な対策として

「入浴中の人に 時々声をかける」 などを 耳にしますが、これは 無意味ではないかも知れませんが、声かけをしない時に 水没していることだってあります
事実、私が立ち会った 水没死事例でも 「声をかけていて 返事もしていたのに ・ ・ ・ 」 と 家族が 述べられていたことは 何例もありました

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