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chap.001 聴診

2014/08/18

内科医にとって、聴診器を胸に当てるのは儀式ではありません

聴診器を胸に当てることで、だいたい 3つの情報がわかります

  1. 心雑音がないか
  2. 心房細動がないか
  3. 肺に、ベルクロ・ラ音がないか

以下 1.から 3.について説明していきます


  1. 年齢を重ねると、心臓の弁 ( 4つある) がしっかり閉じないで、血液が心臓内に逆流する現象が起きてきます
    • それはそのはずで、人間は生まれてから一日に約 10万回の心拍動を重ねているのですから、弁だって経年変化するのは当たり前です
    • 弁の逆流や大動脈弁狭窄 (動脈硬化によって大動脈との間にある弁の面積が小さくなること) は、軽度のうちは、何ら悪影響がないのですが、重症化することもあり、いわゆる 「慢性心不全」 状態になる場合もあります
    • しかし、たとえこのような状態になっても、たいていの場合は内服薬による治療で、日常生活に困らない程度にはコントロールできることが多いのです

  2. 心房細動とは、不整脈の一種ですが、60歳を超える頃から増えてきます
    • 本人は癖になってしまっているのか 「不整脈感」 を感じないことも多いのですが、この不整脈は無症状だからといって放っておくと、よどんだ左心房の中にひそかに血液の固まり (凝血塊) ができます
    • この凝血塊が、何かの拍子に心臓から出て、動脈流によって流れて行くと、臓器の細い動脈に詰まることがあります
    • それが脳血管であれば脳梗塞、腸間膜動脈であれば、腸管の壊死を起こします
    • 心房細動を早く発見して、坑凝固薬を定期服用すれば、これらの疾患をほぼ防止することができます
    • 最近では、 「アブレーション」 という、心臓カテーテルを用いた治療によって、心房細動を整脈に戻す治療法もあります

    なお、心房細動では、右心房も細かく揺れるように振動するのですが、種々の理由で、右心房には凝血塊があまりできず、肺塞栓は臨床的には問題になりません

    なお、心臓を栄養している冠状動脈に凝血塊が詰まることは稀で、心房細動による心筋梗塞があれば症例報告されるほどです

    • このように怖い心房細動は、深酒をした翌日とか、睡眠不足が続いた場合などに、しばしば発症することが知られています

  3. 「ベルクロ・ラ音」 とは、肺の繊維化の状態を、聴診で聞き分けることができる独特の雑音です
    • 深呼吸をすると、ちょうどマジックベルトをはずす時のような 「ピチピチ」 という音がきこえます
    • これは、医学的には 「間質性肺臓炎」 という疾患で、原因にはいろいろあるのですが、気をつけたいのは、今服用している薬剤の副作用としての間質性肺炎 (肺線維症) です

    薬を定期的に服用している人の何人かに一人はこの疾患にかかります
    とは言っても、非常にまれなので、多種の薬を服用しているからといって、特に心配することはないのですが、やはり、定期的の聴診は必須です

高血圧などで、長い間、定期的に診察を受けている人でも、ある時から 1.~ 3.が聞こえ出す可能性があります

だから、医師は、診察のたびに聴診器を使って、これらの新たなる発生がないかを知ろうとするわけです

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