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chap.017 非結核性抗酸菌症

2015/09/30

これは 肺の病気で、近年 非常な勢いで増加しています

僕の外来でも、最近は年間十数例が、新たに発見されています
少なくても 10年前は、このようなことはなくて、とても珍しい疾患でした

殆ど無症状であるから自分では気付かないことが多く

健診の 胸部レントゲン写真などで見つかることが大部分ですが、咳や微熱が出ることもあります

結核が 年齢、性別を問わず発症するのに対して

非結核性抗酸菌症は 好発年齢と 性別に特徴があり、中高年女性の発症が多くなっています

さて、結核菌は、 「抗酸菌」 に分類されますが

非結核性抗酸菌 : NTM (少し前までは、非定型結核菌と呼ばれていたので、今でも 「非定型」 と呼ぶ医者はいる) は、結核菌の仲間でありながら、結核菌のような、人から人への感染はないとされていて、結核菌のような毒性もあまりありません

ヒトからの感染でないとすれば、一体どこで感染するのでしょうか?

残念ながら、現在の研究でも定説はありません
ただ、 NTMは、昔から土壌の中や、浴室の スライムの中にごく普通に存在する菌ですから、入浴時や ガーデング中に NTMを含んだ ミストを吸入することにより、感染が成立するのではないか、という推測もあります

必ずしも免疫抑制剤使用中などで免疫力が低下している人が感染するわけでもなく

普段、全く健康な人が健診などで指摘されることが多いのが特徴といえます

実は、非結核性抗酸菌にはきわめて多くの種類がありあすが

ヒトに感染する大部分が、 Mycobacterim avium complex なので、これは 「 MAC症」 と呼ばれます


臨床診断は

CTでの特徴的な撒布陰影や気管支拡張像から比較的容易ですが、確定診断には、やはり喀痰を検査しなければなりません
どうしても痰が出ないという患者さんの場合は、採血により MAC抗体を検査します
この検査の特異度は 90%を超えるため、 MAC抗体が陽性であれば、それだけで MAC症と診断をつけることが出来ることになります

NTM感染症は結核と異なり薬物が効きにくいことが多く

仮に薬剤が有効であっても、多剤を併用しての長期間の服用が原則です
また、治療により仮に喀痰中に菌が消えても、最低でもさらに 1年間ほど服薬を継続しなければなりません

なお MAC症以外の NTM感染では、菌の種類により、治療薬や治療期間が微妙に異なります

病変部が限局している症例では

手術によって病変部分を切除することが有効であるとされています


では、 NTM感染症を未治療で放置するとどうなってしまうのか?

他人にも感染させず、無症状であれば、あまり治療意欲が湧かないかもしれません

しかし、 NTMの自然歴に関してはまだ余り知られていないので、これに対する明確な答はありません

すなわち、経過は症例によってさまざまで、長期間変化のないものや、急速に進行して呼吸不全に陥るものまであります

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