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No.080 臨床実習

2011/10/21

J治医大5年生のIK君が

飯綱病院に実習生としてやってきたのは8月も終りの頃だった

ネイビーの上下の術衣に身を包み、日焼けした、筋肉質の精悍な青年だ
医局の机が隣であったので、彼と話す機会ができた

彼を数回、飲みに誘った

そして、いつも、医療のことや、他のもろもろについて語り合った
彼はとても積極的、前向きな、熱い人であり、医学知識も豊富で、とてもまだ5年生とは思えなかった
彼言葉の隅々からは、真剣に医療に取り組む意気込みが垣間見られた

実習も終りに近づいたころ、彼からの提案があった

それは、冬休み、夏休みを利用して、 「総合診療医・ドクターG」 のような、検討会を開催しないかと言うものであった

僕は、企画物が好きであるし、こう言った内容ならば、お互い刺激があって良いのではないかと、即座に意気投合した

彼は、医学生同士の横のつながりが数多く、医学生などを中心に、誘いをかけたという
結果、20人前後の希望者が集まったとの報告を受けた
来年1月の日程も決定し、あとは開催を待つばかりだ
まだ第1回目も開催されてはいないけれど、このような形のサマーセミナー、ウインターセミナーが継続することに、大きな期待を寄せている

さて、医学生時代に臨床実習をすることには大きな意義がある

「患者を診るとはどういうことか」 を知らずして、いくら高度な講義を聴いたところで、現実味がない、というか、現実味がないので、興味も湧かず、だから、講義の出席率も悪いわけである
実際の医療の現場にどっぷり漬かって、指導医と共に患者を診て、検査結果を解読し、検査画像を読影し、実際に医療現場では、どのようなことが行われているのかを知ることにより、臨床講義が生きてくる
講義が先ではなく、実践が先だ

基礎医学を済ませてから
臨床医学に進むという現行の教育方針もどうかと思う

自分の経験では、ある程度現場の臨床を知ってから基礎医学、すなわち、解剖学、生化学、病理学などの重要性が理解できた

日本の医学部における医学教育を効率的に作り直さなければ、これからの良い医療環境は決して生まれない

たとえば、医学部は教養部門を一切廃止し、1から2年は基礎医学と臨床医学の講義、3年から6年は臨床実習と、より専門的な臨床講義を並行させるというのはどうだろう
そうすれば、現行の新臨床研修制度など、たぶん不要で、医師免許を取得した直後から、診療に携わることが可能となるかも知れない
要は、新臨床研修制度と同じか、更に高度な内容を、医学部生のうちに体得しておけば、卒後の2年研修は不要となるということだ

新臨床研修システムが導入される前は、医師免許を取得して2年を過ぎた頃には、たいていの医師は臨床医として通用したものだ

日本の法律は、医学生の医療行為を許していないが

この領域こそ 「規制緩和」 をするべきであると思う
危険を伴わない医療行為なら、指導医の下という条件づけで、ある程度許可していかないと、臨床実習の意義が大幅に薄れる
少なくても 「見学だけ」 というのは疑問だ
アメリカ流大好きの日本が、医学教育に関してだけはアメリカを真似しようとしないのはなせだろう?

新臨床研修システムでは

各臨床科を2から3月単位でローテートするので、指導医の資質や考え方にもよるが、見学程度に終ることも多いらしく、2年間の研修を終えても医師として機能しない
薬物の具体的投与量なども全く知らないわけである

医師という職業は

第一線で活躍できる期間が少ない
24歳から60歳まで働いたとして36年、しかし、1人前の医師となるには最低でも10年はかかるので、実質26年しかない
だから、はじめの2年間は大きい
13分の1である
新臨床研修システムが必ずしもすべて悪いとも思わない
現にこのシステムで研修した医師達からは、あまり否定的な意見は聞かれないからだ

しかるに、巷には

国は新臨床研修制度によって医療レベルを上げるというよりも、2年間稼動しない臨床研修医を作ることで、実質的な医師数を約1万7千人削減し、医療費の削減につなげるつもりでいるとか、
「新臨床研修制度により、地方の中小病院から医師がいなくなれば、これらの病院は立ち行かなくなり、閉鎖に追い込まれ、病床数削減を早期にはかることができると考えている等と 穿った見方をする人達もいる

僕は、国の本当の思惑など知る由もないが、信じたくない話ではある

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