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No.211 医者の礼儀、患者の礼儀

2013/02/04

僕が医学生だった頃の話である

知人Y子が、きちんと食べているのに痩せていくので、自分は一体、何の病気か分からず、僕に相談した
僕は、とある大学付属病院に行くことを勧めた
結局、Y子は、その病院で、 「甲状腺機能亢進症」 と診断された

当時、Y子は病気のせいか

普段の落ち着きはなく、いらいらしやすく、思ったことを、そのまま発言した
ある診察日、大学病院の診察室で彼女は、医師に向かって色々質問したらしい

教授の診察補助についていた、ある若い医師は

そんなY子に向かって、足を組んだまま言った

「わからん人だなあ」

この横柄な態度の若い医師の発した一言に

自分は とても傷ついたと、Y子は後で僕に語った
僕は、この大学病院を薦めたことを後悔し、かつ、とても肩身の狭い思いをした

僕はその場にいなかったから

Y子と若い医師のやりとりが、どのようなものであったのか、真実は知らない

その若い医師は

甲状腺機能亢進症の患者の、落ち着きのない態度、くどい物言い、医師に対する態度などに対して、イラついたのかも知れない
もし、患者の態度が、たとえ、そのようだとしても、それは病気がなせる業である
医師なら、そんなことは、わかっていたはずだ

あるいは、その若い医師は

自分の教室の教授の真似をしてみたのかも知れない
しかし、たとえ、どれだけ技量が優れていたとしても、この態度はプロ失格というものだ
また、指導者である教授が、その場で正すべきだった

医師ともあろう者は

患者の言動に対して自分が不快な感情を抱いたとしても、決してそれを表情や言葉に出したり、いやみや皮肉を言ってはならないことを、きっと、その若い医師は知らなかった

以上は古い話であり

今の大学病院の医師は、恐らく、こんな態度をとったりはしないだろう
しかし、この大学病院の医師に限らず、自分の心ない一言が、どれだけ患者の心を傷つけるか、ということに考えが及ばない医師は、今でも案外多いのかもしれない

いや、これは他人ごとではない

僕だって、きっと今までの医師人生の中で、数多くの失言をしてきたに違いないのだ


さて、患者も、無意識のうちに医師を不快にさせる言動をとる場合がある

たとえば、医師が病状説明する時に、腕組みをしたまま聞く人が、しばしばいる
(そう言えば、僕自身も、医学生時代、外科の教授回診の一員として最後尾についていた時、無意識のうちに腕組をして教授の話を聞いていたら、教授に見つけられて叱られたことがあった)

また、僕自身はまだ経験したことがないが、友人の医師によると、ガムを噛みながらとか、足を組んだまま医師の話を聞く人もいるという

医師、患者側、どちらが上,下ということはない

しかし、お互い、社会人としての最低限の礼儀をわきまえていないと、信頼関係は生まれない

医師と患者側の間に信頼関係がなければ

まともな診療を行うことも、受けることもできない
すなわち、お互い、得をすることは何ひとつないと思う

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