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No.279 雪道での転倒

2013/12/24

雪道で転倒する人は多い

実は僕も先日、昼間に、郵便局に歩いて行く途中に転倒した

転倒者の VTRをスロー再生すると

雪あるいは凍結路での転倒様式は、ほぼ同じだ
つまり、踵を着いた瞬間にその踵が滑り、後方へ尻餅をつく形で倒れる
その時、防衛本能から、両腕を伸ばした状態で手を路面についてしまうので、手首を骨折する
橈骨遠位端部 (伸展型) 骨折
いわゆる 「コーレス骨折」 という奴である

僕が骨折をしなかったのは幸運であった

「昼間だから、道路はシャーベット状ではあっても、凍結はしていない」 と油断していた
しかも、サンダルに素足という、信じられない無防備ないでたちであったから、自業自得というものだ

そこで翌日から、雪道や凍結路で転倒しない歩き方の研究を始めた


転倒を避ける方法の仮説として、次の項目を挙げた

  1. 新雪上を歩く (これは基本)
  2. 踵から着地しないで、つま先から着地する
  3. 凍結路では常に両足が地に着いている歩き方、すなわち摺り足歩行をする
    (摺り足をすると滑りやすい部分が分かりやすい)
  4. グレーチング (側溝にかぶせる鉄製の網) の上は滑りやすいから避ける
  5. 常に前傾姿勢を取り、荷物があれば胸の前に抱える
  6. 重心を落とし、低い姿勢を取る (腰をかがめるなど、スピードスケートの選手のように)
  7. 後方へ転倒しかけたら、素早く体を右か左にひねって、体の側面で接地する (接地面積が大きいので衝撃が緩衝される)

これらは実証しなければ意味がない

そこで、いちいち実証実験をした

この中では

「転倒時の体ひねりが本当に可能なのか」

これが最大の難問であった

わざと転倒しなければならないので、危険をともなう
もし誰かに見られたら、恥ずかしいし、助けられたりしたら、尚更である
そこで、誰もいない早朝に周囲の安全を確かめてから、実験した

踵で滑った瞬間

体を右に翻して右前腕と右下肢全体で雪中に着地した

結果は、全く痛くもなく、実験は成功だったが、右側面は雪だらけとなった
雪を払い、周囲に誰もいないことを確認して、何食わぬ顔で歩行を続けた

ただし、予期しない時に滑った場合

果たしてこれがうまくできるのかは普段の練習次第だと思う

なお 1.から 6.はいずれも安定した歩行が可能であり、実証には成功した


余談

昼休みに、白衣の上にカーディガンを着て、滑りやすいサンダルを履き、凍結した緩い上り坂を歩いて実験していた帰り道のこと

ミニパトが僕の横に止まった

降りてきた2人の警察官は

「おとうさん、どこへ行かれるの?」

ん、お父さん?

僕のことらしい

僕 :
病院へ戻るところです
警官 :
入院患者さん?
僕 :
いえ、病院の医者です
警官 :
これは失礼しました
実は住民から
「素足にサンダル履きの、背の高いおじいさんがパジャマで歩いている」 と通報がありまして

確かに素足、サンダル履きだったが

白衣はパジャマと見間違えられたらしい
また、腰をかがめた低い姿勢でゆっくりと歩いている姿が老人に見られたとしても不思議ではない
入院患者が病院を抜け出して、寒空の中を徘徊しているとでも思われたのだろう

研究員時代、実験終わりの深夜

自転車で帰宅途中に職務質問された以来の、久しぶりの職質であった

病院に帰ったら、スタッフから、

「だから言わないことじゃない」 と、たしなめられた

すいません、もうしません

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