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No.358 後医は名医

2014/12/22

僕は自分で名医などと思ったこともないし

人から名医などと呼ばれた経験も、もちろんない
雑誌や、一般向けの本に、 「全国の名医一覧」 などといったタイトルの記事が載っているのを見ると、同じ医師免許を持ちながら、自分はこんなにも 「全国の名医」 とは格が違うのかと嘆かわしくもなる


「 後医名医 」

という格言がある

病初期に ある医者(前医)を受診すると

病状が出揃っていないから診断がつかない
ところが、いつまで経っても治らないから、今度は 別の医者(後医)にかかる

後医 にかかったときには

時間の経過とともに病状が進行して、すでに典型的な症状や所見を呈しているので、後医は簡単に正しい診断を下すことができる

患者は

きちんと診断をつけた 後医を、 「名医」 と思い、
診断できなかった 前医迷医 と思う

格言があるくらいだから

こういったことは世界中どこででも起きていることだと思うし、僕も、前医として、あるいは 後医として、何度となく経験してきたことだ


先日のこと

とある高齢女性が、 40度近い熱発と筋肉痛があったため、ある病院で診療を受けた

担当した医者は、インフルエンザの簡易検査をして、陰性であったため、 「風邪」 として、解熱剤などの投薬をして帰宅させた
ところが 2日たっても一向に回復せず、息苦しさも加わったため、患者は当院を受診した

経皮的酸素飽和度は 92%(正常は 97- 98%)、胸部写真では右肺が真っ白で、 CTで見ると、右中葉を中心に、数日は経過したであろう大きな球状の肺炎像があり、中心には空洞を形成している

前医の処方内容を見ると

感冒薬が中心で、抗生剤は入っておらず、インフルエンザは否定したものの、細菌性肺炎の可能性が全く考慮されていなかったことが読み取れる

しかし、一般的な考えでは

高齢者の突然の高熱は、感冒ではない
基本的には肺炎、腎盂腎炎、胆嚢炎を否定するところから診療を開始するべきである
前医はそういった常識を持っていなかったのであろうか?
前医は決して若い医師ではないだけに、僕は不思議な気がした

僕は感染症に関与する診療を日常的に行っているから

高齢者の突然の高熱は、風邪ではないことくらいわかるが、もしかして、世の中には前医のような医者が結構いるのではと勘ぐりたくもなる

また、感染症以外の領域で

僕が、前医のような手抜き診療をしてはいないだろうかという、自分に対する反省も頭をもたげる


本来、 「後医名医」 なんて格言がなくなることが望ましい

「前医名医」 でなければ、患者は迷惑だし、ただでさえ急増している医療費を無駄に費やすことにもなる

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