ホーム > Dr.ブログ > No.359 再生音楽の経済学

  • 救急の場合
  • 診療時間
  • 面会時間
  • 人間ドック
  • フロアマップ
  • 川口正展のなるほどザ・メディスン
  • Dr.ブログ

No.359 再生音楽の経済学

2014/12/24

本屋で

「オーディオアクセサリー」 という雑誌が目にとまったので、衝動購入した
けっこう昔からある季刊誌である
スイングジャーナルが休刊になって久しく、また嘗て、あまた存在したオーディオ関連雑誌が廃刊となる中、この本はまだ存在していた


しかし

家に帰り、何気なくページをめくるうちに、オーディオ事情が随分様変わりしていることに気づいた

まず、付録についていた 「SACD」 の意味が分からない

調べてみると、 「スーパーオーディオ CD」 の略で、簡単にいうと DVDみたいに容量の大きなディスクに、従来の CDの何倍もの情報を詰め込んでいて、だから CDとは 「比べ物にならない」 ほど、原音に近い高音質とのこと

大きさは CDと同じでも専用のプレーヤーが必要だから

付録につけてもらっても聴くことはできない
SACDのソフトは、すでに 5000タイトルほどが販売されているらしい
でも、そもそも CD不況の現今、一般に普及するのか否か、全く分からない代物だ


どのページを見ても

聞いたことがないオーディオメーカーばかりが並んでいる
フェーズメーション、スペック、ミッション、クリプトン、オクターブ、ウイーンアコースティック、リンデマン、TAD、ケンブリッジオーディオ、 LUMIN
などなど

もちろん

昔からある、アキュフェーズ、マッキントッシュ、ラックスマン、マランツ、スタックス、サエク、エラック、 B&W なども随所に現れるが

名前を聞いたこともないメーカー達は

おそらく 20世紀末に林立したのだろうが、どんな特徴を持っているのか、そもそも、どこの国のメーカーさえもわからないブランドばかりだ

そして、その価格たるや、殆どが簡単に手の出せるような尋常のレベルではない
0 の数を、つい数えてしまう
「単なるプリアンプ」 が 100万円単位の価格をつけられ、 「金賞」 マークとかをつけられて、いくつも紹介されている

こんなもの、一体誰が買うのだろうか?

微妙な音の違いがわかるほど耳の良い人がどれだけいるのだろうか?
人間の耳の構造は、解剖学的には皆、同じようにできているというのに

尤も、経済学的にみれば

オーディオファンが減少したとはいえ、オーディオマニアがいなくなることはなく、また、不況が続くとはいえ、羽振りの良い人だっているわけだから 薄利多売 ならぬ 「高利少売」 商法は成り立つのだろう

また、人間の心理として、 「高価格のものは高品質」 と信じ込む傾向も無視できない

なにも

「空箱に適当に部品を散りばめて高額で売る商法」

などというつもりは毛頭ない

新興の弱小メーカーが良質な音をめざして多額の開発費用をかけて完成した自信の製品であろうから、それだけの対価を要求するのだと、僕は解釈する

しかしながら

ハイエンドオーディオ機器は、きっと高い利益率を出している
これは高級車だけを販売するポルシェの利益率が他の自動車メーカーと比べて群を抜いて高いのと通じるものがあると思う

前にも書いたとおり

オーディオ機器の中で最も利益率の高いのはスピーカーシステムである
当たり前のことだが、単体スピーカーを、ボックスにセットしただけの代物だから原価が低い分、収益率は高い

だからなのか、その雑誌には、高級 (高額?) スピーカーシステムの紹介記事が多く目に付いた

因みに

僕が今でも愛用している JBL、タンノイの製品は、すでにどこにも載っていなかったが


僕の、医学部時代の同級生に S君がいる

彼は今、岡崎市内で医院を開業しているが、学生時代からチェリストであり、今もオーディオファンである

僕は、最近

彼の迷惑も顧みず、日曜日になると、つい電話してしまう

20分間ほどの彼とのオーディオ談義は楽しいし、 S君は僕の知らないことも色々教えてくれる

でも、それ以上に嬉しいのは、昔と変わらない彼の ソフトな声を聞くだけで癒されることなのかも知れない

 |