2015/04/15
のべ何人の外来診療をおこなってきたのだろうか
本当に大雑把だけれど、一日平均 40回 ( 40名) の外来診療をおこなってきたとして計算すると、これまでに 20万回の外来診療をおこなってきたことになる
飯綱病院に移ってからは毎日外来診療をしているから、この 5年間だけでも 5万回
勤務医にとって (たぶん開業医にとっても) けっこう大変な仕事だ
患者さんの前では常に笑顔でいなくてはならないし、分かりやすく説明するために会話をたくさんしなければならない
自分の体調やメンタルが良い状態の時は、これらのことは大きな問題ではなく、むしろ患者さんとのやり取りは楽しい
しかし、いつもそんな時ばかりではなくて、患者さんと話すのがつらい時だってある
自分がインフルエンザや風邪、胃腸炎に感染することは絶対に避けたい
だから、冬場は人の集まる場所に行かないようにするし、宴席や外食は極力避ける
すなわち自分の体調管理を万全にしないと、毎日の外来診療という業務をまっとうすることができない
一日の外来で診ることのできる患者さんの数はむやみに増やすことができない
それでも一人あたりにかけられる時間は少ないから、数分の間に問診をして異常所見を見つけて検査計画を立てる必要がある
大声でゆっくり話したり、ホワイトボードを使って文字で質問し、またこちらの意向は文字を書いて伝えたりしなければならないこともあり、これも時間がかかる
問診をするだけで数分から数十分かかることもあり、これをきっかけにして予約診療に大幅な遅れを生じると、予約患者さんから 「まだですかー」 などと苦情が出ることも多々ある
こんな時、僕はあせりまくるけれども、どうしようもない
重要な疾患発見の糸口になることだってある
だから、患者さんの訴えは全部聞き、カルテに記載する
たとえば、 「手がしびれる」 「めまい ・ ふらつきがある」 「背中が痛い」 「疲れやすくなった」 「足がむくむ」 「階段で息切れがするようになった」 など、しょっちゅう聞く訴えではあるが、病態はさまざまで、生理的な範囲内であることもある一方で、病気の兆候である場合もある
外来診療の限られた時間にこれらを判断して適切に検査、治療をすることは容易ではない
たとえば癌が進行してしまえば患者の信頼を裏切ることになるし、多大な被害を与えてしまうことになる
大袈裟に言えば、外来診療は患者さんの、そしてその家族の人生を背負っているとも言える
責任はきわめて重い
「お医者さん」 が患者の訴えに対して、無数に存在する薬の中から適切な薬を即座に選んで処方することや、その薬の一日に必要な量、錠数、副作用、他の薬との併用注意事項など、全て記憶していることなどに驚嘆したものだ
錠剤は 3錠から 6錠、一日 1回朝、もしくは 2回朝夜、あるいは 3回毎食後と、ほぼ決まっていること
そして、何万種類もある薬剤の中で、 300種類くらい自分の使い慣れたものがあれば事足りること
しかし、医療は日々進歩し、毎月のように新薬が登場するから、常に新しい薬の使い方も覚えなければならないし、さまざまな学会が出す 「診療ガイドライン」 も把握していなければならない
診療ガイドラインが改訂された途端に 「推奨しない」 となることもある
最近の例で有名なのは、心房細動の脳塞栓予防に、かつては用いることも許されていたアスピリンが、新しいガイドラインでは 「推奨されない」 となったことであろうか
入院患者なら毎日診療できるが、外来の患者さんは通常、月に一度か 2月に一度、しかも数分間しか診療時間がないわけで、少しの見逃しも許されないことはつらい
患者さん ひとりひとりを好きになることである
患者さんを好きになれば、患者さんも医者を好きになってくれる
そのためには、他愛ない世間話や診療と関係の内容なたとえば趣味の話を持ち出すのもわるくない
こんな会話をかわすことで、患者さんの緊張もほぐれ 「今日も外来にきてよかった」 と楽しい気持ちで帰ることができるかもしれない
地方の病院は、そういった機能も持つべきであろう
今これを書いているのは昼休みだが、もうすぐ午後の外来が始まる
気合いれていかなければ