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No.424 薄い人間関係

2016/02/05

ある医師が

60歳以上で 独居をしている人 1000名に、幸せ度をはかる アンケートを おこなったという (某ラジオ報道)

最近、独居高齢者が増加している事実がある

やむなく そうなってしまったのか、自分から好んで そうしているのか 不明な点が多いから、この アンケートの結果が注目された

結果は、独居高齢者の幸せ度が そうでない高齢者よりも 随分高く出た

体が不自由な人でさえも 独居を好む人が多かったのである

そして、独居を好む最も多い回答は、 「同居者に気を遣わなくて済むから」 であった

「高齢になってまで、同居者に 気を遣いたくない」
「人生の 残り時間を 自由に使いたい」
このように考えるのは、見方によっては ごく当たり前のことだ

「高齢者 ・ 独居」 で検索すると

「高齢者独居の勧め」 といった サイトが わんさか出て来る
「独居老人 = 寂しい老後」
ではないのである


人は子供の頃から ずーっと周囲の人々に気を遣いながら生きている

自分が 悪く思われないよう、仲間に入れてもらえるよう 気を遣う
そして、時には 自我を押し殺して生きていく
学校、 職場、 家庭
中でも 最も近しいはずの 家族との付き合いこそが 最も ストレスだったりする

配偶者との関係、親子の関係、同朋との関係、親戚づきあいなどなど

自分の好きに振舞っていては、親しい仲でも 良い関係が続くことはない
関係を続けるためには お互い、どこかで自然に、あるいは 自我を殺して振舞わなければならない
もちろん、これが 全て苦痛というわけではなく、その結果として 楽しい家庭生活が営めることも多いから、家族に 気を遣いながら振舞うことが自然になってしまっているし、周囲に 気を遣うことができるのが大人なのだから 仕方がない

しかし、高齢者は違う

自分に残されている時間は 限られているし、子育ても 終っていて、家庭の果たすべき役割が 薄らいでいるからこそ
「いい加減 ここらで 自由奔放に生きてみたい」
と、周囲に 気を遣う人生を やめたくなる時が来るのかも知れない

しかるに、われわれ医者にとっては、独居高齢者は 少し困る

健康ならよいが、高齢になれば病気もする
そんな時、家族と疎遠で、特に 住居の距離が離れていれば 連絡すら十分に取れないこともある

「どうして 一人で暮らしているの?」
「何で 家族と同居しないの?」
「不自由ではないの?」
と、つい思ってしまうのが 本音である

しかし、上述の理由を知れば、そんなことを思っては いけないことがわかる

好んで 独居をしている高齢者は、孤独死しても良い覚悟で 独居を続けているのである
そんな 壮絶な覚悟も理解しないで、 「何で ・ ・ ・ 」 は 無神経なのだろうとも思う

独居高齢者が 比較的安全に暮らせる方法は いくらでもある

大手コンビニエンスストアは 食品などの 宅配サービスをしてくれる
警備会社に 警備を発注すれば、いざという時には 不在勝ちの家族よりも頼りになる
警備会社の 高齢者見守り機能も 今後さらに進化するであろうし、警備会社にとっては 独居高齢者が 新たな市場となることであろう
そして、近い将来、高齢者の独居は ごく普通のことになる


独居を好むのは 別に 高齢者に限ったことではない

若い時から 「お一人様」 が 大好きな人達が増えている

特に 男女関係において、その傾向が顕著だ

「恋愛は コスパが悪い」
「結婚とは、お互いを束縛しあう生活を意味するから 望まない」
こんな街の声は、そこかしこの インタビューで、しばしば聞かれる

すでに 「お一人様市場」 というものが形成されていて

「お一人様カラオケ」 、 「一人焼肉」、 「一人旅ツアー」 など、その需要は しっかりと根付いている

「ある年齢に達したら 結婚するものだ」

という 昔からの常識や、 「恋愛したい」 という 人間の本能が失われつつあり、 「結婚したい人が現れたら 結婚するけど、年齢になったから 結婚するというのは おかしい」 といった、やけにさめた (理性的な?) 結婚観を持つ若者が増えている

女性の 社会進出の機会が少なかった時代は

女性は 結婚して子育てをして、家事をこなし、家庭を守る 縁の下の力持ちになるしかなかった
今は違って、経済力を身につけた女性は 家庭の束縛を好まない

「子は産んでも 夫はいらない」 という シングルマザーも増えている
日本では まだ シングルマザー (子の立場では 「婚外子」 ) は マイノリティーだが、2008年の調査では 日本が 2.1%であるのに対して、先進諸外国では 年々増加傾向にあり、 スウェーデン 54.7%、 フランス 52.6%、英国 43.7%といった具合で、夫や夫の家族と かかわりを持ちたくない、言い換えれば 他人との関わりを 最小限にしたい傾向は 先進国の間では 常識化しているのだろう


昭和時代後半は、いわば 古き良き時代であった

当時とは異なり、社員旅行や 病院職員の病院旅行も 稀になり、人と人との関係が うすーくなっていく現代
そして 薄い人間関係を あえて求める時代
友人との コミュニケーションも スマホで形成できるから、敢えて逢う必要もない
「これも 時代の流れ」 と 言ってしまえば それまでかも知れない

しかし、他人と食事をするなどして 言葉のやりとりをすることは

実は とても楽しく、また インスパイアされることも 多いのも事実である

今は 「婚活」 なんて言葉が まだ存在しているが

きっと それも いつかは 死語になってしまうのだろうか?


何だか 論点が定まっていないことを自覚していますが、思うままに書いているうちに こうなってしまいました

すいません

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