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No.438 手

2016/05/30

日本では 挨拶の基本は お辞儀であるが、海外では 握手であることが多い

当然、初対面の相手とも、さほど 親しくない相手とも 握手はする

握手習慣のある 外国人は

日本人の握手を 「デッドフィッシュ」 などと 揶揄する
すなわち、握手文化に慣れていない日本人は 遠慮がちに相手の手に触れ、強い力で 握らないので、 「誠意がない、まるで 死んだ魚を 握っているようだ」 と 解釈されるということである
実際、僕は 何度か 外国人と 握手をしたことがあるが、皆、その握力は 力強かった

握手文化の国の人と 握手をする時の 正しいマナーは

まず 相手の目を見て、親指を まっすぐに上に向け 相手の手を握り、相手と 同じ程度の力で握る
そして、 「シェイキング ハンズ」 というくらいだから 手を握ったまま 上下に振るのだが、決して 手首で振るのではなくて 肘から上下に振る

なお、握手している手 (多くは右手) の上から 空いている方の手を重ねるのは、 「ポリティシャンズ ・ ハンドシェイク」 と言い、非常に親しい間柄の場合に 限られるという


「手を握る」 という行為は

相手の 体の一部に じかに触れることであるから、日本人同士であれば かなり 親しい間柄の場合に 限られる
だから 日本人は 余程のことがない限り 握手などしないし、仮にしたとしても 相手の手を そんなに強くは 握らないことが多いのではないだろうか

さて、ところ変わって、医療の現場では

特に 回診の際、高齢の患者さんに 握手を求めると、必ず とても喜ばれるし、ポリティシャンズ ・ ハンドシェイク だって してくれる
耳が 遠くなった方に いろいろ話しかけて、 「恐らく 半分も 聞き取れていないだろうな」 と 思った時、立ち去り際に 握手をすると 満面の笑顔で 応じてくれる
こんな時、僕は 手に力を込めるようにする


「目は 口ほどに物を言い」 というが

僕は 「手は 口ほどに物を言い」 のほうが しっくり来るように思う

相手の話が 退屈で イライラすると、聞く側は 手を 無意味に動かす

家族に 患者の 病状について話している時、腕組みをして聞いている人を しばしば見かけるが、こちらからみれば、何て 礼儀知らずの 人だろうと感じる
しかし、きっと 礼儀知らずなんかではなくて、こちらの説明を 全く 信用していないか、 「なに言っているんだ、この 薮医者めが」 と 思っているだろうことは わかる
腕を組んでいる相手は それを 無言で 伝えているのだろう
まさに 手が 物を 言っているわけだ

手には 人格が 宿っているのかもしれない

例えば、手で書く 文字には その人の 特徴が出る
荒っぽく 殴り書きのような字、上手くないけれど 丁寧に書いた字、小さくて 細い字、太くて 見やすい字、優しい字、見事に 美しい字 など、文字を見ると その人の 人格まで 垣間見ることができるように思う

不幸にも 最近は 肉筆の文字を見る機会が 極端に減ったが

少し前までは 医師からの 紹介状の 肉筆文字を見ると、たとえ その医師に 逢った事がなくても 彼の人柄は 想像がついたものである

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