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No.472 外来診療狂騒曲

2017/02/06

内科の外来診療は 傍から見る以上に、作業量の多い仕事である

高血圧や 高コレステロール血症で、一種類の薬だけを処方している壮年の患者は、特別な訴えがなければ、問診、聴診後、前回と同じ処方を 同じ日数処方して、次回来院日の予約を画面上で取るだけの作業であり、実に すんなりと診療を終えることができる
彼らは 職域での健診があり、外来診療で 検査をオーダーする必要もあまりない

しかし、ここは地域柄、高齢者や超高齢者が圧倒的に多い病院である

高齢者では 処方薬の種類も多岐にわたるから、薬の副作用のチェックのための 血液検査や 心電図は 定期的に実施することが必要だ
前回のデータを画面で見ては、今回必要な項目を選ぶ作業が加わる

また、高齢者は 整形外科など、他科との併診の人が多く、 「予約日、予約時刻を他科と合わせてもらいたい」 という要望に答えて、他科の予約日に合わせるべく 処方日数の調整、予約時刻調整作業が加わり、これにも時間を割かれるし、他科での処方内容と重ならないように注意する必要がある


「どんな具合ですか?」
は、診療の最初に担当医が発する言葉だが

壮年者が
「特に変わりはありません」
と答えるのに対して、
高齢者では、必ずと言ってよいほど 何か新しい訴えがある

「便が 1週間出ていない」
「何を食べても 苦く感じる」
「夜間、小用に 10回ほどたつので 眠れない」
「認知症の検査をしてもらいたい」
少し前に テレビの健康番組をみて不安になり 「○ ○ を調べて欲しい」
健診や ドックの結果を持参して 異常値への対処を求める

また、一見 無関係と思われる 多種類の症状を えんえんと訴える

これを 詳しく聞き取り、 カルテに記録し、 原因を考え、 検査を考え、 場合によっては 他科に院内紹介状を書く

「詳しく聞き取る」 といっても、実は これが大変な作業だ

まず 耳の遠い人が多いから、そんな場合は 筆談をするのだが、そういった患者は 目も悪いことが多くて、僕の書いた文字を読み取れない
かといって 患者の耳元で大声で話すと、まるで喧嘩でもしているようで、周囲に丸聞こえになる
そこで活躍するのが 食品用ポリラップの芯となっている ボール紙製の筒
これを耳にあてて話せば、かなりの難聴の人とでも 会話が成り立つ

「その症状は いつからですか?」 と聞けば

「ん、だいぶまえからだな」
と 返されることが ほとんどである

「 2、 3日前から? それとも 1週間前から? それとも秋ごろから?」
と、具体的に絞って聞かねば 情報は得られない


診療を、一時、ストップせねばならないこともある

  • 救急患者が搬送されてきた
  • 病棟で急変が起きた
  • 初診患者が重症で、即入院となった

こんな場合のために

「只今 ○ ○医師は 急患対応のため ○時間ほど外来診療ができません」
という 表示板が用意されている


さて、初診患者だが、予約患者と 予約患者の間の時間で診ることになる

初診は、ほぼ総合診療といってよく、一見、内科領域以外の訴えに聞こえるものも多い
たとえ内科領域であっても、 消化器内科、 循環器内科、 呼吸器内科、 神経内科、 血液内科、 内分泌 ・ 代謝内科、 膠原病内科、 感染症内科、 腎臓内科と、
すべての領域に浅く広く精通していなければ 診療方針が立てられない

中には、モンドール病、ティーツェ病、特発性肛門痛など、その疾患の存在を知っているだけで 即座に診断がつく場合もある

一見 内科領域に見えなくても 実は内科という場合もあり、これには注意が必要になる

たとえば、 「頻尿」 、 「おしっこが近くて困る」
泌尿器科領域疾患もあれば、 糖尿病や尿崩症、 心不全もある

たとえば 肩の痛み、心筋梗塞のこともあった

ひとつの疾患が、人によっては 多彩な症状を示すということも まさによくあること

初診は 実に奥が深く、かつ難しい


時には 世間話も必要

他愛のない世間話や 趣味の話で 患者と親しくなれば より信頼される
信頼されれば、詳しい診療情報が得られ 正診に結びつく


さて、 「薬が余っている」

という訴えは 要注意である

例えば 5種類の薬 ( A~ E )を処方している患者が言う

「Aは 50錠残っていて、 Bは 15錠、 Cは 12錠、 Dは 18錠余っているが、 Eは 1日分足らなかったので 今日は服用していない」 と

Aは 朝昼夕に服用する薬、 Bと Cは朝夕の 2回服用する薬、 Dは寝前服用薬、 Eは朝 1回服用する薬といった具合に 飲み方は 薬によって異なるので調整するのには 随分な労力と時間を要する

苦労の末、きっちり合うように数を合わせて処方しても

そういう人に限って、次回も同じように 不均等な余らせ方をする

「きちんと服用している」 と 主張されるのが常だが、それなら なぜ毎回、それも 不均等に余るのだろうか?
深く問い詰める必要もなく、どこかで 飲み忘れていることを 忘れているに違いない


そんなこんなで 気がつけば、乱戦をきわめた僕の外来は おわっている
外来診療あるあるの 楽屋話になってしまった

しかし

僕が 外来診療で心がけていることは

  • 予約時刻に遅れないで診察すること
  • 「来てよかった」 と思ってもらえる診療をすること
  • 患者を好きになること

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