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chap.006 肺高血圧症

2014/11/25

息切れ、 倦怠感、 胸痛

といった症状があり、病院で検査を受けても原因がわからない

このような場合、 「肺高血圧症」 の可能性があります

「高血圧症」 は よくある病気ですが、 「肺高血圧症」 は 稀な病気で、もちろん、いわゆる高血圧症とは全く別の疾患で、中年の女性に多く見られます

肺高血圧症とは

肺へ静脈血を送る肺動脈が何かの原因で狭くなることが原因で起きる病気です
肺動脈が狭くなる、肺動脈の高血圧の病態にはいろいろあるため、肺高血圧症には、その原因により、 1~ 5群に分類されていますが、ここでは難病指定の 1群について述べます

従来、「原発性肺高血圧症」と呼ばれてきた 1群は、

現在 「特発性肺高血圧症」 (PAH) という病名に統一されています

さて、PAHの原因は、次のように考えられています

「肺血管収縮物質である エンドセリン-1の過剰発現と、血管拡張物質である プロスタサイクリン合成酵素の発現低下が組み合わさったもの」

この状態では、当然、肺動脈は収縮しどおしになるわけで、肺動脈抵抗上昇から、肺動脈高血圧になります

肺動脈の血圧が上昇すると

心臓の 4つの部屋のうち右心室に負担がかかり、 「右心不全」 という病態が出来上がります
なお、一般の 「心不全」 は左心不全のことであり、右心不全は 左心不全と症状が異なります

右心不全は、進行すると

全身のむくみ、肺に水がたまる (胸水) 、腹に水がたまる (腹水) などの症状を呈し、そのため、息苦しい、血中酸素飽和度が下がるなどの症状、所見がでてきます
右心不全というと、ビタミンB1欠乏 (=脚気) が有名ですが、 PAHも必ず鑑別の対象となります

PAHは、治療法がない時代が長く続き

診断されると余命は 2、3年と言われた時期もありました

しかし、現在、いくつかの治療薬が開発され、実用化されています

肺動脈収縮の原因である エンドセリンの受容体拮抗薬である ボセンタン (トラクリア) 、や アンブリセンタン (ヴォリブリス) 、肺動脈拡張を促す プロスタサイクリン製剤の エボプロステノール、その他、 シルデナフィル (レバチオ) 、 ダダラフィル (アドシルカ) などです

これらの治療薬の出現により

PAHの生命予後は著しく改善しています

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