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chap.007 細菌の顔

2014/12/04

「細菌性肺炎の治療を実施しようと思う時、はじめにする検査は何か」

答は

肺炎の原因となっている菌を 実際目で見ることです
もちろん、細菌は顕微鏡 (1000倍) でないと見えません

つまり

痰を採取して、グラム染色をした標本を顕微鏡で観察するわけです
細菌は、全世界に無数の種類がありますが、ヒトに肺炎を起こす菌ということになると、その種類は限定されてきます

外来患者の肺炎の原因菌 (=起炎菌) で最多は、やはり肺炎球菌です

その他、ブドウ状球菌、クレブジエラ、インフルエンザ菌などがあり、マイコプラズマ、クラミジア、レジオネラなどもあります
後者の 3種類は、通常の鏡検では見えませんが、前者の 4種類は、染色され具合や形、大きさなど、それぞれ特徴があり、見慣れた人なら、だいたい見当がつくものです

なお

グレートイミテーター (偉大なる模倣者とでも訳すか) とも呼ばれる結核を否定するために、全ての検体について、抗酸菌染色もおこないます

起炎菌の推定ができれば

「その菌に有効と推定」 される抗生剤を選択して、ただちに使用を開始します

「ホスピタル・ディレイ」 という言葉があります

これは、病院に到着してから 抗生剤が開始されるまでの時間のことをさし、少ないほど、治療効果は良好で、少なくとも 4時間以内の抗生剤投与が求められます
朝、肺炎疑いで入院し、午後から抗生剤を使用するなど、もってのほかというわけです

ただし、鏡検で特定できたはずの起炎菌が

数日後に判明する培養結果と異なることも稀ではなく、また、起炎菌は正しくても、抗生剤の感受性が違っていたということも多いので、培養結果と抗生剤感受性検査結果により、抗生剤を見直す必要があります
また、あらかじめ他院で抗生剤が投与されていた場合、起炎菌が培養されないこともあります

起炎菌が肺炎球菌の場合

抗生剤を使用した翌日には平熱になる、いわゆる 「クライシス」 と歩ばれる下熱型をとります
その他の菌の場合は、毎日少しずつ下熱する 「リーシス」 という下熱型をとります
しかし、近年、肺炎球菌でも リーシス型をとることも多々あり、要注意です


と、ここまでは、ごく一般的な手順を示しましたが

残念なことに、肺炎の初期には、熱発だけで、咳も痰も出ないことが多く、喀痰を採取することが出来ない場合も多くあります

肺炎球菌やレジオネラを考慮するのであれば

尿中の肺炎球菌抗原、レジオネラ抗原の迅速測定が可能ですし、マイコプラズマであれば、血中マイコプラズマIgM抗体の迅速測定が可能ですが、その他の起炎菌の場合は、全く推定と勘で抗生剤を選ぶしか方法がありません

今回は 外来から入院する、いわゆる 「市中肺炎」 について述べました

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