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chap.008 細菌の顔 2

2014/12/09

前回は 市中肺炎を主体に述べました

なお、市中肺炎の起炎菌の中で

重症化したり、死亡率が高いのが肺炎球菌であることから、今年 10月に、肺炎球菌に対する定期ワクチン接種が制度化され、自治体から補助金が出ることとなりました

65歳から 5歳刻みで 100歳までが今回の対象となったため、案内の葉書が届いた家も多いと思います

なお、現行のワクチンは

90種類以上ある肺炎球菌のうち、頻度、重症度の高い 23種類の肺炎球菌の抗原を含んでいるに過ぎないので、 「昨年、肺炎ワクチンを打ったのに、肺炎球菌性肺炎にかかってしまった」 などという場合も当然起きます

肺炎球菌は

丸い形の菌体が 2つ縦に並んでいるため、双球菌とも呼ばれ、顕微鏡下ではとても分かりやすい顔をしています

肺炎球菌は、常在菌といって

健常人の気道内や口腔内に常在しているため、誤嚥などにより容易に肺炎が発症します
「泥酔して朝まで路上で寝ていた」 なんて人は、若年者でも、誤嚥による肺炎に罹ります


さて、今回は

入院中の方、もしくは自宅で暮らしていても感染症に弱い体質の方、そして、リウマチや悪性腫瘍などの治療目的で免疫を抑える薬を服用している方の肺炎について述べます

普段は感染力が強くなくて、生活圏のどこにもいる無害な細菌、

たとえば、セラチア (水まわりのピンクのカビのように見えるのがセラチア菌の塊) 、アシネトバクター・バウマニ、緑膿菌、コリネバクテリウムなどが、免疫力の落ちた人には起炎菌となりえます
これらの菌は、感染力は強くなくても多くの抗生剤に耐性化していることが多く、一旦感染が成立すると、治療薬の選択に苦慮します

これらの中で特に注目する菌があります

それは緑膿菌です

緑膿菌は、正常の免疫力を持った人には無害で、気道、腸管、尿路などにも少数常在しています

緑膿菌は

グラム染色ではピンクに染まる、短棒状の比較的小さめの姿をしているので、鏡検では分かりやすいのですが、一旦感染すると その毒力は強く、敗血症性ショックを起こしたりして、発熱してから1日で死亡することもあり、 「感染症の救急疾患」 と呼ばれたりします


高齢者の熱発を 「風邪だろう」 などと安易に考えてはいけません

高齢者の熱発は、肺炎、腎盂腎炎、胆嚢炎など、生命にかかわる重篤な疾患のことが多いからです
早い時期に、検査設備の整った医療機関を受診しないと、悪い意味での 「ピンピンコロリ」 となってしまうかも知れません

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