2013/04/05
ここから先、三浦は小栗のすることを眺めている他なかった
バッグマスクの人工呼吸をやめさせ、左右の胸部打診を始めた
「右か」
そう呟くと、右胸にイソジン液を流し、皮切もしないで右第三肋間にペアンを突き立て、一気に押して、出来た穴をペアンで広げた
「プシュー」
音を立てて空気が出て行く
小栗は、今開けた穴からトロッカーカテーテルを挿入し、メラサに接続した
こうして西方さんは、病棟へと運ばれていった
小栗 : 「三浦君、自然気胸に人工呼吸はないでしょ、君が人工呼吸したから気胸を広げて緊張性気胸を起こしちゃったじゃない」
三浦 : 「えっ、なぜ自然気胸とわかったんですか?」
小栗 : 「COPD ※ 患者はブラ (※) があるかも知れないから、胸写を撮る時、思いきり息を吸って止めるとブレブの破裂を起こして自然気胸を招くことがあるんだ」
三浦 : 「レントゲン撮影で息を吸った時に気胸を起こしたんですね」
小栗 : 「挿管して人工呼吸する時は、状況をよく確認してからにしなければね」
三浦 : 「・・・・」
こうして西方さんは医原性死亡の淵から、からくも生還することができた
この物語は全くのフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません
※ ブラ : 肺胞の一部が嚢胞化したもので、胸膜直下にできたブラ(=ブレブ)が破裂すると、自然気胸を発症する
※ COPD : 「慢性閉塞性肺疾患」の略、喫煙歴の長い人に多い