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No.025 アスピリン喘息の話

2011/03/01

アスピリン喘息

この病名を知っているだろうか?

実は、僕の母は、若くしてアスピリン喘息発作で亡くなった

アスピリン喘息とは、アスピリン服用によって喘息発作を起こす特異体質で、
アスピリン以外にも、解熱鎮痛薬、食品着色料、食品保存料、
薬のカプセルの着色剤の一部、注射剤や吸入薬の添加剤の一部とか、
環境のさまざまなものに含まれるある種の化学成分が体に入ると、激しい喘息発作を起こす

つまり、自作の野菜とか、食品添加物が含まれていないことがわかっているもの以外は、安心して口にすることができない

成人喘息の数%がアスピリン喘息と推測されていて、中年女性に多いのが特徴だ
難治性喘息として扱われることが多い

アスピリン喘息の特徴は、鼻茸(ポリープ)があることと、嗅覚障害である

日常の食品で発作を起こすので、ほぼ毎日、重篤な発作を繰り返す

僕の母は、永年にわたって嗅覚障害に悩まされていた

何を食べても全くにおいを感じないというのである
だから食べる楽しみがない

空腹を満たすためだけに、ただ食べた

彼女は嗅覚障害の治療に耳鼻咽喉科を訪れた時

鼻茸があることがわかった

現代であれば、これだけの情報があれば
「アスピリン喘息」
と察しがつく

しかし、当時はアスピリン喘息の概念すらなく、無嗅症、鼻茸、喘息が結びつかなかった

結果、種々の気管支拡張薬を併用され、また取り替えたりしながら苦戦したが、発作はひどくなるばかりであった

母が死去してまもなく、アスピリン喘息の概念が確立した

その時に、嗅覚障害 と 鼻茸 の謎が解けたのだが、遅かった

さて一般に、喘息発作の治療としてステロイド剤の点滴をする場合があるが、
コハク酸エステル型のステロイド
(サクシゾン、ソルコーテフ、ソルメドロール、水溶性プレドニン)
このアスピリン喘息発作を誘発する

僕は昔、S病院に勤務していた頃

救急で運ばれる喘息発作の患者を治療する機会が多くあった

Aさんという女性は喘息持ちで、発作でしばしば救急外来を訪れた
この時、ソルコーテフを点滴すると、発作が良くなるどころか、却ってひどくなった

もちろん、そのステロイド剤は、他の喘息患者では発作が改善するのである

当時は、それがどうしてなのか全くわからず、
どの本を読んでも記載はなく、
周りの医師に相談しても、誰もそのわけを知らなかった

仕方なく、Aさんだけには、リンデロンを用いたら発作はおさまった

今思うと、Aさんは、きっとアスピリン喘息だったのだ

今では喘息発作を治療する際

医師はアスピリン喘息の可能性を念頭に置き、
アスピリン喘息発作を誘発しないとされるリン酸エステル型ステロイド
(デカドロン、リンデロン、水溶性ハイドロコートン)を使う

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