2011/04/08
変なことを想像しないで欲しい
今回は、主として病棟における医師と看護師のチームワークの話である
担当患者に、ある注射をしようと、ナースに指示したところ、意地悪婦長Aが、横から「先生、それ、本当にいいんですかぁ?」と聞く
こちらは何がいけないのかわからない
かといって、新米医師にもプライドがあって、「何がいけなかったんですか?」と、Aに聞く気には、とてもなれない
古参ナースの新人医師いじめは日常茶飯事のことだった
日ごろから研修医をいじめる意地悪古参ナースには、研修医によって、とてもありがたい渾名(あだな)がつけられていた
ぶたねこ(顔、外見から)、にくばやし(肉林:確か小林という姓で、肥満していたから)などは、今でも忘れない
終戦後、インターン制度のあった頃のこと、日本の大学病院の序列は、
だったという話がある
つまり、無給研修医は、動物よりも下の、最下層
冗談とばかりに、笑ってすまされる話ではない
インターンは臨床指導など、ろくに受けられず、
「技は見て盗め」
的世界が展開していたのか
手取り足取り、まるでお客様のように、丁寧に指導が受けられる
おまけに、結構な額の給料だって保証されている
指導医は、
「指導医研修」
なるものがあり、新人の指導法を学ぶために、合宿訓練を受けるほどだ
本来、医師と看護師は、チームで医療を行うものだ
しかし、現実は、必ずしも理想どおりではない
医師と看護師はしばしば、対立関係となる
ある看護師は、医師がカチンと来るようなことを、平気で言う
瞬間、腹が立つ
しかし、よく考えると、当たっていることも結構多い
悔しいが、こんな看護師から学んだことは、医療以外のことを含めて、多かったような気がする
看護師の仕事の都合も考えず、不必要に遅い時間に指示を出す
当然、看護師の残業は増える
ある看護師は、最も重要なことを、見落とす、もしくは医師に報告しない
このような、一見、些細に思えることが、いろいろなトラブルを生む
もちろん、全員がそういった関係であるはずはない
トラブルを起こす医師や看護師は、だいたい決まっている
「ああ、またあの人か」
といった具合だ
医師よりも患者に接する時間が長く、かつ、接し方は密である
オムツ交換の時に、患者の褥瘡、発疹、腰痛を発見する場合もあり、それらを記録する
また、体温、脈拍、排便回数、尿量、摂食量、患者とのやりとり等々を看護記録に書き、また医師に報告する
医師は、これらの記録や報告を参考にして診察したり、投薬したり、診断の糸口をつかむ
入院した夜、看護師によって鼠径ヘルニアの存在が発見され、
それが腹痛の原因であったことがわかり、
とても恥ずかし思いをしたことがあった
(それ以来、腹痛の患者には、パンツを脱がすことにしている)
この場合は、看護師に助けられたわけであるが、チーム医療としては、それはそれでよかった
敢えて言わないこと、あるいは言い忘れたことも、看護師には言う
だから、看護記録は、きわめて大切な患者情報源だ
もちろん、看護師も医師記録欄を読み、その医師の治療プランなどを把握しようとする
担当患者の病態について、自分がどう考え、次に何を計画しているのかの方向性を、カルテに記すべきであろう
しかるに、カルテをきちんと、毎日書く医師は多くはない
僕のことを棚に上げて、他医のことを論じるのは誠に恐縮なのだが、・・・
検査、診断、治療の手技がうまい医師は、言うに及ばない
しかし、
彼らの評価は予想以上に、きわめて高いのだ
看護師の受けを良くすることを目的に、患者を診ているわけではないのだが、看護師が自分の医療内容を常に見ていることは、病棟医なら誰でも知っている
医師の、同僚医師に対する評価(=ピアレビュー)よりも、日頃から医師をよく観察している看護師が医師に対して下す評価の方が正しいことは、よくあることだ
入院患者が深夜、胸部不快感を訴え、夜勤の看護師Tが心電図をとり、
「心筋梗塞みたいです」
とドクターコールしてきた
心電図は確かに、典型的な下壁梗塞で、経過や血液検査でもそれは確かめられた
「看護師は胸痛があることだけを報告すれば良く、余計なことを勝手にするな」
という医師は多いだろうし、医師の指示を待たずに検査をすることは、医療法か医師法違反なのかも知れない
Tは、(患者が胸部不快感を訴えていることを僕に報告し)、前後して、自分で心電図をとり、心筋梗塞を発見した
Tを咎めるどころか、むしろTを評価するべきではないのか
確かに、診断までの、ほんの少しの時間短縮になったに過ぎないかも知れない
「胸痛の原因がきっと心臓にある」
と考えた
だから、心電図を取らざるを得なかった
きっとそういうことだったのだろう
僕はTを評価するし、こんな看護師とチームを組みたい