2011/08/26
そう、最近、櫻井翔、宮崎あおいW主演で映画化された、あの小説である
まず気づくのは、作者のペンネーム夏川草介は著者が信奉している夏目漱石をもじったものであろうということ
次に、登場する病院や大学などが実在していて、名前を変えて出ていること
さらに、小説全体のタッチが、昭和初期の作家のそれと、とても似ていること
主人公が登場人物に渾名をつけるなどは「坊ちゃん」だ
「御嶽荘」 という古い下宿屋が主人公のすみかだが、このあたりで映像が浮かんでくる
昭和のような情景描写があると思えば、電子カルテが出てきたり
過去と現代を行き来するような、独特で不思議な世界を醸し出している
ただ淡々と、医者と患者の心の通い合いを、また、ほのぼのとした夫婦愛を描くばかりだ
しかし、読み終えた時、何ともいえぬ穏かな、暖かい気持ちになれる
医療という、殺伐とした環境に日々身を置いているだろう作者だからこそ書けた物語なのかも知れない
贈られた日付けが正確なのは、表紙をめくった所に 「川口先生へ 熊崎由佳 2010. 1.14」 と、マジックでサインしてあるからである
著者でもないのに、こんな所にサインしているのは、僕があえて頼んだからだ
彼女はこの本を読んで、思うこと、共感できることが色々あって、僕にも読んで欲しかったのだろうと思う
今は一児の母であり、医師のご主人と、3人で暮らしている
いつも、はにかんだ笑顔で明るく振舞う彼女
しかし、芯はしっかりしていて、それでいて謙虚
診療をしている姿は、凛として、実に頼もしく、別人だ
重い機材を担いで山に登る写真家でありながら、夫である主人公の前では敬語を使い、とてもかわいい妻であり続けるハルと、何となく重なる由佳先生なのである