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No.065 高血圧

2011/08/25

健診を担当しているので、高血圧の人を発見することがある

どのくらいの血圧を高血圧と呼ぶのか、基準はしばしば改訂され、今は収縮期血圧(上の血圧)が130以上を高血圧と呼ぶ

しばしば改訂される基準など、ちょっと怪しいが・・・

以前のブログで、高LDLコレステロール血症の人が多いことを書いたが

高血圧の人は、幸いなことに、高LDLコレステロールの人ほど多くはない

日ごろは

一般の外来通院患者さんを診ているので、当然、高血圧の人は多い

しかし、健診をしてみると、健康な人は本当に、何歳になっても、正常血圧なのだと実感する

その昔、「血圧は年齢+90」 と、言われていた時代があった

血圧は年齢と共に上昇して、それが当たり前という考えである
これだと、長寿社会の今日、90歳の人の血圧は180mmHgで普通ということになる
しかし、実際 90歳代の人は、血圧は 120前後のことが多い
すなわち、高血圧を放置している人は、90歳代まで生きられないのだろう

高血圧症がやっかいな理由の

第一は、重症の高血圧症を除いて、無症状であること

第二は、高血圧はサイレントキラーと呼ばれるように、ある日、突然死、もしくは再起不能になるような疾患を引き起こすこと
あるいは、「ラクナ梗塞」 という特殊な脳梗塞を起こし、認知症などの原因となりうること

では、軽から中等度の高血圧を指摘されたらどうしたら良いのか?

薬? 食事? 運動? 減量? ストレスを避ける?
答えは、このすべてである

特に重要なのは食事で

食塩の摂取量が多いと、高血圧症を引き起こす

日本人の食塩摂取量は、一人一日 11g前後である
これに対して、欧米人の食塩摂取量は、一日 3g未満と言われる

なぜ、こんなに違うのか

それば、日本が、味噌、醤油、煮物、漬物の食文化であるからだ
アマゾンに住むヤノマモ族は、一日の食塩摂取量が1g以下であるが、彼らを調査すると、高血圧の人は一人もいなかったという

降圧には、一日 6g以下の食塩摂取に抑えることが重要である

ところが、日本人が、料理を最も美味しいと感じる食塩濃度は 0.9%であると言われる
たとえば 「美味しい味噌汁」 なら 110mlで 約1gの食塩を、また、美味しい煮物なら 200gで1.8gの食塩を含むことになる

一般的な醤油なら 10ccで 1.4g前後の食塩を含む
だから、醤油を使えばつかうほど、1日 6gの食塩摂取に抑えることは、難しくなる
また、「自分は薄い味付けが好みだ」 と言っている人も、薄い味の料理をたくさん食べれば摂取塩分量は多くなる

減塩の工夫としては

まず煮物をへらして、焼き物、蒸し物を増やすこと
煮物であれば、醤油を使う量を極力減らし、そのかわり、出汁をきかせて旨みをつけること
また、野菜、果物などカリウムを含んだ食品を多く摂ると、カリウムが体内のナトリウムを追い出すので血圧が下がる

自分の食塩摂取量を知る方法がある

それは、24時間の尿中ナトリウム量を測定することである
その日に食べた食塩は、ほとんどが尿中に排泄されるからである
病院では、しばしば行われている方法である

食塩を摂取することによって高血圧になる人は
「食塩感受性」 を持った人々である

食塩感受性があっても、若い頃は食塩摂取で高血圧にならない
食塩感受性がある人は、中年を過ぎるころから、高血圧になって行く

日本人には、食塩感受性の遺伝子を有する人が多いとされているので、誰でも食塩摂取は控えめにしたほうが賢明だろう

肥満も高血圧を誘発することが知られている

一つの説明として、肥満者の内臓脂肪が、アンギオテンシノーゲンなどの血圧上昇物質を分泌するからとの説がある

高血圧の、薬物に頼らない治療は、減塩、体重の減量(内臓脂肪を減らす)、アルコール摂取の禁止もしくは減量、適度な運動である
また、徹夜をするなどの生活習慣も、血圧を上昇させるので、睡眠時間はしっかり確保したほうが良い

このように生活習慣を是正しても

まだ高血圧であれば、降圧薬の出番である

最近の降圧薬は、大した副作用もなく、確実に血圧を下げるものが多い
ここでも、
「降圧薬を飲み始めたら、一生飲み続けなければならないのですか?」
の質問は必ず出る  (コレステロールのページ参照)

答えは、「必ずしもそうではない」 である

降圧薬治療を開始した人の 約 1割は、薬を中止できると言われる
ただし、その 1割とは、薬を飲みながら、これまでの生活習慣を徐々に是正できた人達である

残念ながら、今の降圧薬には、高血圧症を治癒に導く作用はない

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