2011/08/29
「講演会」 と称して、製薬メーカーの後援を得て、各分野の著明な教授先生が、最近話題になっているテーマについて、医学に関する学術講演をすることが頻繁に行われていた
もちろん、内容はその製薬会社の製品関連で、聴衆に、その製品(薬)を是非使ってみようと思わせる趣旨が多かった
過去形にしたのは、最近、このような形式の講演会は、めっきり減ったからである
いや、長野県は少ないだけのことかも知れないが・・・
偉い先生の、ありがたーい講義を聴き、そのあと、「懇親会」と称して豪華な立食パーティーが用意されていた
殊に、日本のバブル期には、派手な講演会が、高級ホテルで連日開かれていたものだ
受講料がないのは当然で、懇親会に出席するのにも費用はかからない
ほぼ毎日といっていいほど、講演会は開かれていた
当時の研修医や、若い医局員達は、無給に近い貧困な生活の毎日で、一日の診療に疲れ果て、常に腹を空かしていた
だから、彼らは「講演会」という言葉には、とても敏感であった
研修医や、医局の若い無給医にとっては 「講演会」=「懇親会」 と聞こえた
講演を聴くというよりは、懇親会で食物にありつくことが目当てで、皆、こぞって出席したものだ
開業医先生を含めて数百人規模の聴衆を集め、ホテルの最大の宴会場で執り行われ、帰りには手土産まで用意されていた
手土産といっても、メーカー名や薬の名前を印刷した置時計だったり、ハンディークリーナーだったり、結局、大したものではないのだが、大きな包みを貰うと、少し得をした気分になって、おなかも満ちて、大満足で帰途についた
講演会で貰ったボールペンを使ってカルテを書いていると、ペンに書いてある講演会の時の薬の名前が目にとまる
つい処方箋にその薬を書く
だって、美味しいもの食べさせてもらったんだし・・・
これこそ、メーカーの思う壷だ
「お前、何でその薬を処方するんだ」
もともと懇親会目当てで参加した講演会だから、講演内容など覚えているはずもない
だから「何で」と聞かれても、しどろもどろになるばかりだ
僕はあまり出席しないが、時に、製品色を前面に出さない、本当に学術的な講演のことがある
その場合、必ず、講演後に、演者に質問をすることに決めている
講演内容を確実に捉えなければならず、講演をしっかり聴くということが一つ
また、質問で演者に反論しようとするなら、自分にそれだけの知識や経験がなくてはならないので、日ごろから勉強するようになることが一つ
つまり、質問タイムでの、演者との攻防戦が面白いから、出席する
別に誰かと懇親をしに来たわけでもないし、研修医の頃と違って、腹を空かしているわけでもないので