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No.071 「総合診療医 ドクターG」

2011/09/15

NHKで毎週放送される、病名あてクイズ形式のバラエティー番組

毎回、○○大学教授などの、著名といわれる総合診療医が登場する
そして、自分が実際に経験したとされる症例を、ドラマ仕立ての再現VTRによって提示する
全国から参加した有名病院の研修医達が、このVTRに隠されている病名のヒントとなる症状、状況を頼りに、出題者と討論しながら推理形式で診断名に辿りつく

研修医達は、最初は皆、はずれ診断を出す

これに対して、出題者がコメントをし、ヒントを出し、VTRによって追加情報を提示し、再び討論し、最後に正しい診断に導くのである

どこまで台本があるのか、ないのか、わからない

しかし、最初から正解が出たのでは、番組進行上、都合が悪いわけで、症例提示では、情報を少しずつ出し、時には、わざと診断を狂わせる情報を入れている場合もある

さて、この番組は、一体どんな視聴者を想定して制作されているのだろう?

制作者の意図は恐らく、一般視聴者に 「総合診療とはどんなものか」 認知してもらいたいのだろうことは推量できる

浅草キッドがおもしろおかしく司会をつとめるバラエティーだが

内容は、けっこう高度なので、恐らく医療関係者以外の視聴者が 「なるほど」 と合点がいったり、 「あるある」 と感じることはないだろう
「診断に至る過程は簡単ではないんだ」 と言ったことを理解するのがせめてではないか

先日、この番組が、 「甲状腺機能低下症」 を扱っていた

再現VTRの主人公の主訴 (主な症状) は、 「めまい」「難聴」 である
実は、僕はこれまでに甲状腺機能亢進症機能低下症を何度も診断してきたが、一度も、めまい を主訴とした人はいなかった

さっそく、バイブルである、ハリソン内科学をめくる

確かに、 「めまい (小脳失調によるふらつき) が稀に起きる」 と、たった一行ではあるが、記載されている

しかし、一般的に、めまいの鑑別診断としては、甲状腺機能低下症は挙がらないのが常だ
「ひずめの音を聞いてシマウマを思うな」 という、診断学上の有名な格言もある

もちろん、実際の患者を前にすれば

甲状腺機能低下症の典型的症候や、特徴的な血液検査異常が見られるはずで、診断をはずずことはないだろうが、かつて内分泌学会専門医であった僕にとっても 「勉強になった」 回であった

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