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No.112 KY先生

2012/01/26

KY先生 (以下敬称略) は、僕の盟友である

僕が大学医局に入局して2年後、 「内分泌を専攻したい」 と、同じ医局に彼は入局した

以後、不思議なことに、僕と、経歴の多くを共有することとなる

僕がSLセントラル病院に赴任して帰局すると
KYは入れ違いに SLセントラル病院に赴任
僕が東京女子医大に国内留学すると
KYは入れ違いに東京女子医大に国内留学
僕が第三内科に戻り、教員になると
KYは少し遅れて帰局し、教員となって研究、学生指導をした

思い起こせば、彼と同じ職場で仕事をしたのは、この時だけで、あとはすべてすれ違いだったわけだ

そう言えば、 17年前の阪神淡路大震災の折には

真っ先に医療救護班に志願したのが KYであり、僕が後続隊として、彼と行き違いに神戸に向かった
この時だけは、順番が逆であった

さて、僕が KB病院に移り、結局 KB病院を去ることになった時

KYは大学で准教授をしていたが、僕の要請に応じて、後任として KB病院に着任してくれた
そして、大半の勤務医がいずれは開業を目指す中、僕と同じように、まだ、勤務医を続けている

KYは後輩の面倒見がよく

人望があり、後輩からは必ず慕われる
「旧第三内科の医局員の大半は彼が集めた」 と言っても過言ではない
僕は彼のことを 「人たらし」 呼ぶ
勿論、良い意味で

KY先生は、まさに 「空気の読める」 先生なのだった

彼の臨床家としての技量は、傑出している

きわめて稀な疾患だってぴたりと当てる
当然ながら、内分泌部門では中部地区に数少ないトップ・スペシャリストの一人であるが、内科一般、救急医療など、何でもこなす

しかし、彼の能力は、それだけに留まらず

僕のあまり好きではなかった実験 ・ 研究でも力量を存分に発揮した
「ペーパーメーカー」 と呼ばれ、発想力が柔軟で、研究論文を、いとも簡単に、しかも、短期間で一流の欧文誌にアクセプトさせる才能があった
頭が良いだけでなく、周囲の状況を見抜く力が冴えていた
彼の指導によって、多くの旧第三内科医局員が学位を取得することができたものだ

KYは札幌の名門高校出身であり、スキーを得意とする

僕も彼と一緒に、しばしばスキーツアーに参加した
彼の滑降スタイルには、デモスキーヤーの華麗さはない
しかし、どんな斜面もこなす地元スキーヤー独特の、実用性の高い滑降であったと記憶している

KYと僕とは、行動パターンが正反対である

例えば、彼は囲碁の実力がトップクラスであるが
僕は勝負ごとには全く興味がない
例えば、彼はパチンコが大好きであるが
僕はギャンブルに興味がない
例えば、彼は社交的で、敵を作らないが
僕は、たぶん、結構、敵を作ってきた
例えば、彼は魚釣り趣味が昂じて、遂に自分の漁船を所有し、休日には漁師に変身する
いっぽう、僕は、魚釣りに対して興味はない

ただし、両者には唯一の共通点がある

それは、飲み会をこよなく愛すること、イベントごとが大好きであるということだ

KYは僕よりも年齢は下だが、 「後輩」 という感覚ではない

親友というわけでもなく、言ってみれば、同じ戦場を駆け巡った、心から敬愛できる 「盟友」 である

現在 KYは KB病院が改称した A市民病院で

幹部医師として、病院新築事業を推し進めていると聞く
僕は、そんな生涯の盟友と出会うことができて、本当に幸せだったと、心から感じる今日この頃である

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